ベルゲンの街にはブリッゲン(Bryggen)と呼ばれる一角がある。ここは1360年から数百年に渡り、ドイツのハンザ商人たちが商館を構え、干しダラや魚油などの取引を行っていた地区だ。
「ブリッゲン」とは波止場を意味し、その名のとおり船着き場に沿って、三角屋根のカラフルな木造商家が建ち並んでいる。長い歴史の中で度重なる大火事によって焼け落ちてきたが、その都度オリジナルの設計どおりに再建されて現代に至る。
そのため、中世ノルウェーの建築様式と、ハンザ商人たちの暮らし振りを今に伝えるものとして、ユネスコ世界文化遺産に登録された。現存する建物の3分の2は18世紀初頭のもので、残りは1955年の大火事の後に復元された。現在では、建物のほとんどが店舗やアトリエとなっており、住居としては使われていない。
ブリッゲンの建築物は外見も面白いが、内部の構造がまた非常に興味深い。特にハンザ博物館は、当時の商家(宿泊場所/倉庫/店舗)を細部に至るまで保存してあるので、ハンザ商人たちの時代にタイムスリップしたような気分になる。
時間に余裕があれば、ハンザ博物館から少し離れた場所にあるショートスチューエネ(Schotstuene)も訪れて損はない。こちらは博物館の別館ともいうべき建物で、1840年まで厨房や集会所として使われていた。幾度も火事に見舞われてきたブリッゲンでは、商家の中で料理や暖房のために火を使うことが禁じられていたという。そのため厨房が別の場所に設けられていた。それがショートスチューエネだ。
ハンザ商人たちの栄華は過去のものとなって久しいが、彼等の富の源であった干しダラは、現在でもノルウェーの重要な輸出産品の1つであり、魚市場などでも昔と変わらぬ形で売られている。
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