新型旅客機が誕生するまで──その開発・製造プロセスを追う秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/4 ページ)

» 2011年05月16日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

世界のメーカーが開発・製造を分担

 ローンチカスタマーの導入計画も含めて、新しい旅客機をつくっても採算がとれると判断すると、開発計画はいよいよ正式にスタートする。新型機の開発には1兆円以上かかるといわれているだけに、エアライン各社から最低でも200機、300機程度の発注がなければ、ビジネスとして成功しない。値段が安い中・小型機の場合の採算ラインは当然、400機、500機と上がっていく。

 さて、新型機の開発が決定すると、サプライヤーと呼ばれる世界中の協力メーカーでそれぞれが担当するパーツ(部品)の製造を開始する。2大航空機メーカーの1社であるボーイングでは、さまざまな分野でのハイテク技術を擁する協力メーカーを、アメリカ国内はもとよりイギリス、イタリア、シンガポール、オーストラリア、韓国など世界各国に組織してきた。その中にはもちろん、日本も含まれている。

飛行機と空と旅 機体を構成するパーツが世界中の協力メーカーから運ばれてくる

 例えば“ドリームライナー”の異名をもつボーイング787の開発・製造で日本のメーカーが深く関わってきたことは、以前にこの連載のレポートでも報告した。従来のアルミ合金に代わってボディ素材に採用されたカーボンファイバー(炭素繊維)複合材は日本のメーカーから供給されているし、主翼やその他の主要部品のうち、トータルで見ると3分の1以上の製造を三菱重工業や川崎重工業、富士重工業といった日本メーカーが担当している。787が「準国産旅客機」と言われるゆえんである。

日本の21メーカーがエアバスと連携

 2大航空機メーカーのもう1社、エアバスも例外ではない。エアバス機の開発と製造のプロセスでも、“メイド・イン・ジャパン”の技術が重要な役割を果たしてきた。

飛行機と空と旅 史上最大の巨人機にも“メイド・イン・ジャパン”技術が欠かせなかった

 ベストセラー機となった単通路型A320ファミリーや、それに続く双通路型のA330/A340ファミリーの製造で、エアバスと日本メーカーは古くから部品供給パートナーとして協力関係を構築。そして最新のA380では、上の図に示したように日本からこれまでで最大の計21社が協力メーカーとして名を連ねている。

 そうして完成した主要なパーツは、ボーイング機なら米シアトルのエバレット工場へ、エアバス機なら仏トゥールーズ工場へと運ばれ、最終ラインでの組み立て作業へと移行する。

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