第46鉄 雪国の美女とダイヤモンドダスト――米坂線杉山淳一の+R Style(5/6 ページ)

» 2011年03月09日 11時50分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

スウィング・ガールと相席に

 自分の席に戻って車窓を眺める。ここから米沢までは約2時間。だいたい映画1本分の時間で、雪の車窓を愛でるにはちょうどいい。うれしいことに小国を過ぎてすぐに晴れてきた。雪の平原、濃い緑の森、雪化粧の山、そして青空。そう、こういう景色が見たかった。雪の車窓といえば豪雪の飯山線、山間の雪渓が見事な只見線が有名だ。米坂線を挙げる人は少ないけれど、この穏やかな雪景色は心を落ち着かせる。陽気な音楽が似合いそうだ。

 視線を車内に向けると、さっきホームで話をした女子高生が斜め向かいのボックス席に座っていた。彼女は進行方向に背を向けてこちら向き。車窓を眺める横顔が見えた。その表情が優しく穏やかで、雪の車窓によく似合っていた。なかなか絵になる場面だな、と眺めていたら、とうとう目が合ってしまった。かなり照れくさい。照れくさいけど、ちょっと話をしてみたくなった。中年オヤジがナンパでもしているみたいでみっともないと思いつつ、勇気を出して話しかけてみた。彼女は戸惑いつつも、向かいの席に座ることを許してくれた。

話し相手になってくれた少女

 私は彼女を怖がらせてしまったかもしれないと思い、簡単に自己紹介をした。ダイヤモンドダストの話から、今年の雪は多いの、少ないの……いつのまにか、インタビュー取材をしているような雰囲気になってしまった。でも、旅の記者が取材をすると思ってくれたほうが彼女は気楽かもしれない。高校3年生で、山形鉄道沿線の高校に通っているという。山形鉄道といえば、映画『スウィングガールズ』の舞台だよね、と言うと、なんと彼女は吹奏楽部とのこと。どうやら私は本物のスウィングガールに出会ってしまったようだ。彼女はこの春から少し離れた大学に進学するという。将来は病院内学級の先生になりたいそうだ。高校ではバンド活動もやっていて、彼女は紅一点のギター。「モテモテじゃないか」「うん、そうかも」すっかり打ち解けて、いい笑顔を見せてもらった。

白い景色が続く
雪化粧の山と川と
山形鉄道のディーゼルカー。スウィングガールズのマークがある

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