第43鉄 「元レッドアロー」、アルペンルートを走る――富山地方鉄道杉山淳一の +R Style(4/6 ページ)

» 2010年12月06日 13時02分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

宇奈月駅、沖縄のアイスクリームを食べながら足湯

 黒部鉄道は国鉄三日市(現在のJR黒部駅)と宇奈月駅を結ぶ鉄道だった。宇奈月では日本電力が建設した専用鉄道と接続した。黒部川上流の電源開発の資材は、国鉄、黒部鉄道、専用鉄道の間でリレーされた。黒部鉄道は資材輸送だけではなく、沿線の温泉観光開発も手がけていた。富山鉄道は黒部鉄道に接続することで、自社の鉄道旅客を増やそうとしたというわけだ。後に富山電鉄は黒部電鉄を合併した。こうして、富山から宇奈月温泉に至る富山地方鉄道本線が完成した。

 急行電車は西へ向かう。電鉄黒部駅は電車の車庫があって、珍しい車両もあるらしく、鉄道ファンが熱心にカメラを向けていた。ここからしばらく平野部を走ったのち、下立駅を過ぎると勾配が大きくなった。ここからは南へ向きを変え、いよいよ宇奈月温泉駅への山岳区間である。電車は力強く上っていく。かつて西武5000系として都心と秩父を往復した16010形の本領発揮だ。トンネルを越えると黒部川が形成した谷の中。愛本駅のそばには鉄柱と電線がズラリと並ぶ変電所がある。いよいよ黒部川の電源地域に踏み込んだ。

黒部川は電源開発地帯

 緑の山に挟まれて、山道を上っていくと終点の宇奈月温泉駅。黒部峡谷鉄道と接続する駅としても知られている。ちなみに黒部峡谷鉄道の駅は宇奈月駅。西武秩父駅も秩父鉄道と接続していたので、こんなところも16010形の古巣に似ている。西武鉄道5000系として製造されてから41年、富山に来てから15年。いつまでも頑張ってほしい。

宇奈月温泉駅に到着
黒部峡谷鉄道の車両が並ぶ
駅前に温泉の噴水がある。宇奈月温泉の源泉は7kmも山奥の黒薙温泉からパイプで引いているそうだ

 せっかくだから街を散歩してみよう。温泉噴水のある宇奈月温泉駅から宇奈月駅までは約200メートル。沿道に足湯を見つけた。ここはホテル「フィール宇奈月」で、足湯は「カフェ・ボンフィーノ」のオープンテラスだ。足湯無料とあるけれど、その心意気に敬意を表して店内へ。峡谷の肉まんとコーヒーで朝食をとる。このお店では、沖縄のブルーシールアイスクリームを扱っていた。イモが原料なのにアーモンドチョコレート風味の「ウベ」をいただき、足湯に浸かりながら食べる。こういう「頭寒足熱」もいいものだ。

無料の足湯スポット(左)。ブルーシールアイスは「ウベ」が好み。子供の頃に食べて以来、内地では見かけなかった(右)

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