第42鉄 海底駅、連絡線、昭和の記憶――津軽海峡の今昔を訪ねる杉山淳一の+R Style(5/6 ページ)

» 2010年10月28日 14時48分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

竜飛岬の風景を楽しみ「階段国道」を下りる

 ケーブルカーの地上部には青函トンネル記念館がある。というより、ケーブルカーでトンネルに降り、作業坑を見学して、再びケーブルカーで上ってくるという「体験坑道見学コース」が記念館のメインコンテンツだ。「竜飛海底駅見学整理券」を利用して、竜飛海底駅で降りて地上に上がり、またトンネルに戻るというコースはその逆向きである。そして、残念ながらこの竜飛海底駅下車は遠からず終了予定になるという。北海道新幹線が青函トンネルを走り始めると、竜飛海底駅は「竜飛定点」という名称になり、非常脱出口の機能に限定されるからだ。

 JR北海道とJR東日本は、北海道新幹線開業後の在来線の扱いについて、夜行列車の「北斗星」「カシオペア」については未定ながら、「白鳥」「スーパー白鳥」は廃止の方針だという。竜飛海底駅に停まる列車は「白鳥」のみ。しかも、竜飛海底駅見学は「白鳥」の廃止より一足先に終了する可能性がある。北海道新幹線の建設工事が進捗すれば、竜飛海底駅は本来の作業基地の役目を担うという。青函トンネル記念館から降りていくコースは存続すると言うけれど、竜飛海底駅を利用できる機会は今のうちだ。記念館の今年の営業はもうすぐ終わってしまうが、来年中には訪れた方がいいかもしれない。

 今しか楽しめない竜飛海底駅見学コース3種類のうち、青森発は「竜飛2コース」だけ。そして、もっともオススメなコースも「竜飛2コース」である。なぜかというと、竜飛岬の滞在時間が最も長いから。青函トンネル記念館の見物だけなら短時間でもいい。しかし、「竜飛2コース」なら坑道見学を除いてもたっぷり時間があるから、竜飛岬の先端まで散歩に行ける。片道20分から30分程度の時間を見込んでおこう。竜飛岬に何があるかといえば、まあ岬しかない。だけど、竜飛埼灯台の先にある展望スポットに立てば、180度以上に広がった海がある。空気が澄んでいれば北海道も望める。そして、この海の下を向こう側までトンネルがあると思えば、青函トンネルの偉業が実感できるというものだ。

竜飛岬からの眺め。地球は丸いと実感できるところ

 もう1つ思い出に残るスポットは「階段国道」だ。正しくは国道339号線といって、青森県弘前市と東津軽郡外ヶ浜町を結ぶ道。その終点付近はなんと階段になっている。地元の人の話では、ほんとうは岬をぐるっと迂回する道になる予定だったけれど、とりあえず短絡する道を階段で整備したらしい。国道なのに階段という奇妙な所は全国でもここだけで、珍しさから観光スポットになっている。記念館から歩いていくと階段国道の終点、つまり階段の上に着く。降りていくと小さな港町があって、どこからか子供たちが遊ぶ声が聞こえた。細道の先に広がる穏やかな町並み。大切にしたい日本の景色だった。

こちらが階段国道。意外と長い
階段国道を降りると小さな港町が見える

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