第39鉄 夏の青春18きっぷ旅(3)SLだけじゃない! 魅力満載の大井川鐵道杉山淳一の+R Style(5/7 ページ)

» 2010年09月24日 22時30分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

トロッコ列車で絶景を行く

 大井川鐵道沿線には温泉が多いためか、途中駅で下車する人も多い。空席に移動しながら左右の車窓を楽しめる。夏の山、夏の川の風景を満喫しつつ約1時間。SL列車は千頭駅に到着した。SL列車の旅はここで終わり。SL目的の人々はここで折り返してしまうけれど、大井川鐵道の魅力はここまででようやく半分。ここから先、井川ダムまではトロッコ列車の井川線が通じている。こちらは小さな客車で行く森林と渓谷の旅だ。

井川線のトロッコ列車
窓から川を渡る風が入ってくる

 井川線は井川ダム建設の資材輸送と建設従事者の通勤のために作られた路線とのこと。途中の駅では資材輸送用の貨車も見えた。ほとんどがトンネルと鉄橋で、トンネルとトンネルの間には渓谷の絶景あり。油断できない車窓である。どこをとってもいい景色だが、オススメの車窓は3つ。すべて車内放送で告知してくれるので、見逃す心配は無用だ。

 1つ目はアプトいちしろ駅と長島ダム駅の間。ここは日本で唯一のアプト式線路を使っている。アプト式とは、線路の間に歯車レールを敷いて、機関車側の歯車を噛み合わせて進む仕組み。急勾配を克服するための技術で、かつては信越本線の横川−軽井沢間にもあった。長野新幹線の開通で同区間が廃止になった後、大井川鐵道がこの方式を採用した。その理由は、長島ダムを建設する際に井川線のルートを変更する必要があキり、1000分の90もの急勾配ができたから。1キロ進むと90メートル上昇するのである。

アプト式電気機関車。線路の中央に歯車レールが見える
アプト式区間は視界が開けている

 井川線の列車がアプトいちしろ駅に着くと、後部にアプト式区間用の電気機関車が連結される。この機関車に押される格好で急勾配を上がっていく。これだけでも珍しい景色だけど、車窓右側の大井川沿いは広々として良い景色だ。この区間のクライマックスは長島ダム。大きなコンクリートの壁が現れる。その壁の手前には長い吊り橋。あそこから放水を眺めたら面白そうだ。

長島ダムの堤

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