第38鉄 夏の青春18きっぷ旅(2)吾妻線、噂の現場を歩く杉山淳一の+R Style(5/6 ページ)

» 2010年09月17日 21時08分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 ダム問題はともかくとして、「やんば館」の駐車場では地元の人々が市を開いていた。冷たい水に浸かっているトマトが50円。「沈んでいる方が甘いよ」と言われ、腕を突っ込んで取り出した。かじると確かに甘い。私の太ももより大きな夕顔が300円。カンピョウの原料だが、細かく切って豚バラ肉と炒めてもうまいそうだ。残念ながら、徒歩の旅人には持ち帰れない。

さらに歩いて「日本一短いトンネル」へ

 冷たいトマトに元気をもらい、さらに歩き続けて川原湯温泉駅に到着した。「やんば館」の見学時間も含めて、1時間半も歩いたことになる。駅舎で15分ほど休憩して、また歩き出した。次の目的地は「日本でもっとも短い鉄道トンネル」だ。場所は川原湯温泉駅から約2km。照りつける太陽と流れ続ける汗。今、私の身体は郵便局のテーブルに置いてあるスポンジのようだ。

川原湯温泉駅。新ルートの開通に伴い廃止になる予定の駅だ
日本一短いトンネルに向かう途中にあった看板。ここも水の底になる予定

 今までの道より木陰が多く、ちょっとだけラクだ。このあたりは吾妻渓谷と呼ばれており、吾妻川沿いには遊歩道も整備されている。でもそこまで降りたら、また上ってこなくてはいけない。黙々と歩き続けること約25分。歩道に小さく「樽沢隧道(日本一短いトンネル)」の看板があった。見上げればそこには確かにトンネル。もうすこし歩くと同じ看板があって、振り返ればそこもトンネルの入り口がある。確かに短い。時刻表を調べると、20分後に列車が通りそうだ。歩道に用意されていたベンチで休憩しつつ、その時を待った。

やっとたどり着いた樽沢隧道。しかしこちらからだと長さが分からないので……
反対側に回って樽沢隧道を見る。列車1両の長さは約20メートルあるが、このトンネルの長さはその半分以下だ

 大変な思いでここまで来たというのに、電車はあっさり通り過ぎた。でも、電車1両より短いトンネルの姿を見られたから満足だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.