第31鉄 私のルーツをたどる旅――肉と桜と池上線杉山淳一の +R Style(4/4 ページ)

» 2010年04月17日 10時40分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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 荏原中延の次は戸越銀座。日本中あちこちにある「○○銀座」発祥の地で、商店街が賑わっているとしてメディアにもよく登場する場所だ。ここもゆっくり散歩したい街の1つ。3つめの地下区間、ちょうど国道1号線を潜り抜けたところには、かつて「桐ヶ谷」という駅があった。線路脇の土手に痕跡があるらしいが、電車の中からは判別しにくい。わざわざ見に行くほどでもないけれど、戸越銀座を散歩するなら立ち寄ってみたい。

 電車は築堤を通って大崎広小路へ。そういえば築堤という工法も昭和の遺産のようなものだ。いまなら盛り土などせずに、コンクリートの杭を打って高架にするだろう。でも築堤のおかげで列車の通過音が静かになる。池上線沿線は住宅地として人気だが、その理由の1つは「線路のそばでも意外と静かだから」かもしれない。

 大崎広小路駅は高架駅。山手通りに面した改札口までは細い階段で通じている。ここから終点の五反田駅まではたったの300m。東海道新幹線1編成より短い。そしてここも珍しい鉄道スポット。2つの駅の間に片渡り線が2つある。終着駅手前の分岐器は、「|×|」形の両渡り線タイプが多いけれど、五反田駅は「|\|」と「|/|」の片渡り連続となっている。両駅間の微妙なカーブに合わせているらしい。線路好きにオススメだ。

ALTALT 五反田駅手前の片渡り線。奥にもうひとつある(左)。池上線五反田駅は山手線より高いところにある。当初は山手線を超えて都心へ向かう計画だったという(右)

シメは五反田のメンチカツ

 五反田駅に到着し、池上線を乗り通したら――小腹が空くはず。空くんだ! 洗足池だって歩いたし! というわけで、ここでのオススメはハンバーガー……いや失礼。五反田には確かにおいしいハンバーガーショップ黒毛和牛ステーキで人気の店もあるけれど、最後に紹介する肉はメンチカツ。目黒川の橋のそばにある洋食店「スワチカ」に行こう。揚げたてのメンチカツを箸で割ると、肉汁がジュワッと流れ出す。これで白いご飯をかっ込んで、豚汁で飲み下す。皿に残った肉汁は千切りキャベツに絡めていただく。……肉好きには至福のひとときだ。

ALT 「スワチカ」のメンチカツ定食(1080円)。ご飯と豚汁とお新香が付く。ランチタイムは皿にご飯も載せたワンプレートスタイルで840円。ちなみにスワチカはカレー粉のブランドだそうで、このお店の自慢はカレーライス。いつもメンチカツでごめんなさい

 今回は私のルーツを辿るたびにお付き合いいただき感謝。毎回、連載の最初に掲載しているGoogle Mapの沿線説明も、いつになく項目が多くなってしまった。ちなみに、大井町線と交差する旗の台駅のそばにもオススメの鳥料理屋「鳥樹」があるけれど、これはまた別の機会にしよう。

今回の電車賃

東急池上線:蒲田 → 池上 120円/池上 → 御嶽山 120円/雪が谷大塚 → 石川台 120円/洗足池 → 五反田 150円


著者プロフィール:杉山淳一

著者近影(2006年5月に閉館した、東京・万世橋の交通博物館にて)

 肉食系鉄道ライター(魚介類が苦手)にして、前世からの鉄道好き。生まれて間もなく、近所を走っていた東急池上線の後をついていったという逸話あり。曰く「いつもそばを走ってたから、あれが親だと思った」

 コンピューター系出版社でゲーム雑誌の広告営業を経験した後、フリーライターとなる。オンライン対戦ゲーム、フリーウェア、PCテクニカルライティングなどデジタル系の記事を専門とし、日本初のEスポーツライターとしてオンライン対戦ゲーム競技を啓蒙する。

 趣味は日本全国の鉄道路線探訪で、現在の路線踏破率は約8割。著書は『もっと知ればさらに面白い鉄道雑学256(リイド社)』『知れば知るほどおもしろい鉄道雑学157(リイド社)』『A列車で行こう8 公式ガイドブック(エンターブレイン)』など。


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