第29鉄 特急料金100円、長野電鉄のロマンスカーで小布施へ杉山淳一の +R Style(2/5 ページ)

» 2010年03月23日 05時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

地元の小さな名ガイドと盛り上がる

 長野電鉄の長野駅は、JR長野駅前広場の地下にある。コインロッカーが並ぶ待合スペースはガランとして寒々しいけれど、雪の季節はありがたい。どこからか鰹だしの良い香りが漂っていて、ふと見れば片隅に立ち食いそば屋がある。ここで体を温めていこう。

 ホームでちょっと並んで先頭車の展望席を確保した。振り向けば子ども連れが多くて、オジサンはちょっと恥ずかしい。遠慮している男の子を捕まえて、隣の席に誘った。その後ろには付き添いのおばあさんだ。今日は両親と祖父母宅に遊びに来たそうで、長野駅までおじいちゃんのクルマで来た。おじいちゃんは先回りして終点で待っているそうだ。ロマンスカーが大好きで、遊びに来るたびに電車に乗りにくるという。長野市近郊には遊園地がないので、地元の子どもたちにとってはロマンスカーが遊園地代わりになっているのかもしれない。発車までに子どもの数が増えてきて賑やかになってきた。なるほど、展望車は最高の遊具。落ち着いて温泉に行きたいお客さんは中間車へ――そんなすみ分けができているらしい。

出発〜いよいよ地上へ(左)。長野電鉄生え抜きの2000系特急電車(右)

 賑やかな展望車は、子どもの扱いに慣れた人なら2倍楽しめるはず。地元の子どもたちと仲良くなれば、勝手に景色を解説してくれるからだ。「もうすぐ地上に出るよ」「もうすぐ単線になるよ」「鉄橋があるよ」ただでガイドしてもらっちゃってうれしいな。チップ代わりにアメでも持ってくれば良かった。「次の駅には車庫があるんだ」「ほんとだ! 電車がいっぱいだ!」……もう、どっちが子どもか分からなくなってきた。

りんご畑を過ぎて山麓へ

 単線区間に進んでしばらく走ると、ゆけむり号は千曲川を渡る。大きな橋は「村山橋」といい、鉄道ファンにはちょっとした名所。同じ橋に道路と線路が同居する。双方がぴったりくっついているので、歩道からの電車の眺めは大迫力。この橋は2009年に架け替えられ、歩道との仕切り壁が透明になっている。いちどのんびり歩いてみたい橋だ。

 屋代線が合流する須坂駅は長野電鉄の要衝である。小さなガイドさんが教えてくれたように車庫があり、ゆけむり号どうしがすれ違う。電車好きなら幸せな気持ちになれる駅だ。長野電鉄の電車はほかにも、東急電鉄から譲渡された8500系と、営団地下鉄日比谷線で活躍した3000系が各駅停車用として活躍している。この組み合わせは往年の東急東横線の再現でもある。

須坂駅でロマンスカー同士がすれ違う

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.