第20鉄 晴れた日は紅葉と夜景を楽しむ――丹沢・大山観光電鉄杉山淳一の +R Style(2/5 ページ)

» 2009年12月05日 12時30分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 大山ケーブルカーで出かけるにあたって、注意をいくつか。女性はハイヒールやサンダルではなく、スニーカーなど歩きやすい靴を履くこと。登山靴までは不要だが、かなり歩くことになる。もう1つ。足腰が元気なときに行こう。登山しなくても眺望の良いところへ連れて行ってくれるのがケーブルカーだが、大山ケーブルの場合はそうでもない。ケーブルカーに乗るまでが大変なのだ。

 なにしろ「大山ケーブル」バス停から「大山ケーブル駅」までは約550メートルの上り坂。坂というより、ほとんどが階段になっている。ここは「こま参道」と呼ばれており、沿道にはお土産屋さんや豆腐料理の店が並んでいる。ケーブルカーを目指して直行すると息が切れる。沿道のお店を冷やかしながら、のんびり歩くといい。上りのお客に商品を勧める店員さんはいない。荷物が多いと大変だと知っているからだ。「帰りに寄っていってね」と笑顔で見送られつつ駅へ向かった。

大山ケーブルバス停と大山ケーブル駅の間は「こま参道」。のんびり歩かないと息切れする

 大山は標高1251.7m。別名を雨降り山と言って、地元の農民からは雨乞いの神様とされていたそうである。大山は関東平野から西側にあり、昔も今も天候は西から変わっていく。つまり、大山が雨雲に隠れたら降雨の前兆となるわけだ。山頂からは縄文時代の祭事用の土器が出土しているという。その後、山頂には阿夫利神社が造られた。阿夫利の名は雨降りが転じたとのこと。祭神は山の神様「大山祗大神(おおやまづみのかみ)」と、「大雷神(おおいかづちのかみ)」「高オカミノ神(たかおがみのかみ)」。「大山祗大神」はイザナギとイザナミの子だという。「大山祗大神」は軍神でもあったそうで、鎌倉幕府の源頼朝をはじめ、多くの武将が信仰したという。「大雷神」は天狗の姿という話もある。

 これら3体の神様が揃って、人々の海の幸、山の幸を生み出し、商売にも御利益があるとされた。江戸時代には、大山詣では庶民の信仰と娯楽の対象となって、関東各地に大山詣でをするための組織「大山講」が形成されていく。江戸時代から明治にかけて、関東の庶民にはメジャーな観光地だったというわけだ。古典落語に「大山詣り」という演目がある。大山は博打にも御利益があるとして、暢気な庶民が遊山に行くという噺(はなし)だ。CDを買うなら五代目古今亭志ん生がオススメ。当時の貨幣価値や断髪の重大さを独自に補足した名作と言われている。

こま参道のモミジもいい色合い

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