第15鉄 利府支線で行く、仙台のミニ鉄道博物館杉山淳一の +R Style(3/3 ページ)

» 2009年10月17日 08時30分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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 ここならではの注目の車両をいくつか挙げると、まずはED91形電気機関車だろう。展示車のなかで、ただ1つ形式プレートがない車体だ。これは登場当時はED45形といって、国鉄初の交流電気機関車だ。新幹線200系車両は先頭車と食堂車がある。新幹線の食堂車は貴重かもしれない。そして、アニメから出てきたような流線型の952・953形試験車の愛称は「STAR21」。高速運転の可能性と環境などの影響を調べるために作られた。1993年に最高速度425km/hを記録している。

ED91形電気機関車(左)。時速425キロメートル「STAR21」(右)

 そして新幹線試験車の961形。東北新幹線と東海道新幹線の直通運転の可否を検証するため、1973年に作られた。新幹線は強力なモーターと大量の電力を使用するため、電圧を高くできる交流電力が採用された。しかし、日本は東西で交流電力の周波数が異なる。東海道新幹線は西側の60Hzに統一されたが、東北新幹線では東日本の50Hzが採用された。そのため、東海道新幹線と東北新幹線の相互乗り入れは不可能だった。そこで、両方の電圧に対応できる機器を搭載し、日本列島を縦貫できる新幹線車両を試作したというわけだ。

 試験走行は東海道新幹線と東北新幹線で行われたため、961形はこの2つの路線を走行した経験を持つ珍しい車両である。もしも国鉄が分割民営化されていなければ、961形の試験結果を基にした車両で「仙台発名古屋行き」などの新幹線が実現したかもしれない。なお余談だが、長野新幹線は軽井沢と佐久平の間で交流電源の周波数が変わる。そこで、長野新幹線「あさま」に使われているE2系は60/50Hzの両方の区間を走行できる。これが961形の量産型といえなくもない。

961形試験車両

 大宮の鉄道博物館や京都の梅小路蒸気機関車館には及ばないけれど、JR東日本新幹線総合車両センターは「東北のミニ鉄道博物館」として、とても価値のある存在だ。入場料は無料で、見学可能時間は9時から16時まで。なんと、年末年始以外は見学可能で定休日はないという。なんとも粋な計らいではないか。

 なお、見学については予約が必要だ。もちろん工場の休業日はあるので、このときは展示ルームと展示車両のみの見学となる。では、稼働日はどうかというと、さらに工場内まで見学させてくれるのだ。工場内見学は、ガイドカーに乗って約20分で巡回する方式で定員は20名。こちらも要予約となっているから、センター見学の申し込みの時に合わせて申し込もう。

200系の食堂車もある(左)。予約すれば場内見学も可能(右)

今回の電車賃

 仙台−利府 JR普通片道運賃 190円

 JR東日本新幹線総合車両センターの見学は無料(要予約)


著者プロフィール:杉山淳一

著者近影(2006年5月に閉館した、東京・万世橋の交通博物館にて)

 肉食系鉄道ライター(魚介類が苦手)にして、前世からの鉄道好き。生まれて間もなく、近所を走っていた東急池上線の後をついていったという逸話あり。曰く「いつもそばを走ってたから、あれが親だと思った」

 コンピューター系出版社でゲーム雑誌の広告営業を経験した後、フリーライターとなる。オンライン対戦ゲーム、フリーウェア、PCテクニカルライティングなどデジタル系の記事を専門とし、日本初のEスポーツライターとしてオンライン対戦ゲーム競技を啓蒙する。

 趣味は日本全国の鉄道路線探訪で、現在の路線踏破率は約8割。著書は『もっと知ればさらに面白い鉄道雑学256(リイド社)』『知れば知るほどおもしろい鉄道雑学157(リイド社)』『A列車で行こう8 公式ガイドブック(エンターブレイン)』など。


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