第10鉄 7月17日運行開始! 飛鳥山に登場した“新しい乗り物”とは杉山淳一の +R Style(3/3 ページ)

» 2009年07月11日 04時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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北区西ヶ原、名探偵が好む甘味処

 さてここまで来たら、渋沢栄一のほかに、もう1人のヒーローを訪ねよう。飛鳥山公園の南側を出ると北区滝野川。少し先へ歩くと西ヶ原だ。本郷通りの中央分離帯にある一里塚、ここを過ぎると滝野川警察署。その手前の小道に入ると七社神社。小川が流れる滝野川公園を通りすぎてしばらく進めば、平塚亭という和菓子屋と平塚神社がある。さて、これらの場所が登場する有名な探偵小説といえば何だろう?

 答えは、内田康夫氏のトラベルミステリー。2時間ドラマでもおなじみの浅見光彦シリーズだ。浅見光彦は北区西ヶ原に暮らす浅見家の次男で、兄は警視庁の刑事局長。光彦はこの実家に母と兄夫婦と暮らしている。亡き父は大蔵省の官僚で、そういえば造幣局(現国立印刷局)も滝野川警察署のそばにある。光彦が事件に首を突っ込むたびに、滝野川警察署の刑事たちが身元確認に訪れる。それを知った母は、兄の仕事の邪魔をするなと光彦を叱る。これが浅見家の日常らしい。

探偵浅見光彦が愛した「平塚亭」(左)。平塚神社はひっそりとしていた(右)

 家では弱い立場の光彦が、事件の関係者と密会する場所が平塚亭というわけだ。光彦は平塚亭のみたらし団子が好物という設定になっている。小説では光彦が喫茶店のように利用しているけれど、実際はガラスケースを構えた販売店で、茶店の雰囲気はなかった。お年寄りが休憩できるような小さな椅子とテーブルがあって、そこに「北区内田康夫ミステリー文学賞」のチラシがさりげなく置いてある。ここは私も含めて「アサミスト」と呼ばれる浅見光彦ファンの聖地である。しかし、お店も客もそれを気取るところがない。お店はごく普通の地元の和菓子屋さんで、私の他にも絶え間なくお客さんがやってきた。

 さて、今日の散歩の締めくくりは平塚亭のお団子にしよう。おっと、水ようかんも旨そうだ。水ようかんを神社で食べて、団子はおみやげに持って帰ろうか。

平塚亭の「みたらし団子」と「あん団子」。みたらし団子はスーパーのそれとは違い、ちゃんと焼いてあって香ばしい

今回の電車賃

斜行モノレール(飛鳥山公園入り口−飛鳥山山頂)無料。平塚亭のお団子は1本110円。


著者プロフィール:杉山淳一

著者近影(2006年5月に閉館した、東京・万世橋の交通博物館にて)

 肉食系鉄道ライター(魚介類が苦手)にして、前世からの鉄道好き。生まれて間もなく、近所を走っていた東急池上線の後をついていったという逸話あり。曰く「いつもそばを走ってたから、あれが親だと思った」

 コンピューター系出版社でゲーム雑誌の広告営業を経験した後、フリーライターとなる。オンライン対戦ゲーム、フリーウェア、PCテクニカルライティングなどデジタル系の記事を専門とし、日本初のEスポーツライターとしてオンライン対戦ゲーム競技を啓蒙する。

 趣味は日本全国の鉄道路線探訪で、現在の路線踏破率は約8割。著書は『もっと知ればさらに面白い鉄道雑学256(リイド社)』『知れば知るほどおもしろい鉄道雑学157(リイド社)』『A列車で行こう8 公式ガイドブック(エンターブレイン)』など。


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