貝塚公園には飛行機も鎮座している。「DH.114 ヘロン」という。イギリスのデハビランドが製造した機体だ。日本では1950年代から1973年まで近距離旅客機として活躍したという。この公園は航空ファンにもよく知られているらしい。
貝塚公園のおもしろさは展示物だけではない。公園の脇を西鉄電車が走り、その向こうを鹿児島本線の特急が駆け抜ける。上空は福岡空港発着機の飛行ルートになっていて、頭上を旅客機が頻繁に飛んでいる。それも尾翼のマークが分かるほどの大きさだ。引退した機械だけではなく、現役の列車や飛行機、あえて言うなら側道のトラックまでを借景にするところがユニークだ。こんな交通公園は珍しいのではないか。
大正生まれの蒸気機関車の向こう、あるいは航空旅客時代の先達の頭上を最新鋭のジェット機が通過する。貝塚公園は、そんな面白いアングルで乗り物写真が撮れる公園だ。途中下車のつもりが、つい長居をしてしまった。
あれから2年。宮地岳線は予定通り短縮されて貝塚線と名前を変えた。今年2月の報道によれば、貝塚駅で向かい合った線路をつなぎ、地下鉄と相互乗り入れする計画もあるらしい。すでに2007年には地下鉄の車両を貝塚線で走らせる実験もしたという。あの日私が公園から駅に戻り、駅構内で舌鼓を打った立ち食いうどん屋「やりうどん」は、パン屋になったそうだ。わずか2年で街は変わる。放っておけば、鉄はどんどん錆びていく。
貝塚公園は変わらぬ姿だろうか。ナハネフ22よ、君は今も青いか。
福岡市営地下鉄 福岡空港−貝塚 290円。
貝塚公園の入園は無料。
肉食系鉄道ライター(魚介類が苦手)にして、前世からの鉄道好き。生まれて間もなく、近所を走っていた東急池上線の後をついていったという逸話あり。曰く「いつもそばを走ってたから、あれが親だと思った」
コンピューター系出版社でゲーム雑誌の広告営業を経験した後、フリーライターとなる。オンライン対戦ゲーム、フリーウェア、PCテクニカルライティングなどデジタル系の記事を専門とし、日本初のEスポーツライターとしてオンライン対戦ゲーム競技を啓蒙する。
趣味は日本全国の鉄道路線探訪で、現在の路線踏破率は約8割。著書は『もっと知ればさらに面白い鉄道雑学256(リイド社、近日発売)』『知れば知るほどおもしろい鉄道雑学157(リイド社)』『A列車で行こう8 公式ガイドブック(エンターブレイン)』など。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング