HDアニメーションの可能性に期待――「エクスマキナ」荒牧監督インタビュー(1/3 ページ)

» 2008年03月12日 13時30分 公開
[本山由樹子,ITmedia]
photo 荒牧伸志監督

 士郎正宗のコミックを基に、2004年に製作された3DCGアニメーション「アップルシード」。人間と機械(サイボーグ)とクローン(バイオロイド)の境界が曖昧になった未来世界で描かれる壮絶なバトル・アクション。モーションキャプチャーを駆使したキャラクターのリアルな造形と動き、そして自在なカメラワーク。ハリウッドでしか作れなかったSF大作が、実写に近いリアルさで製作することができる可能性を感じさせた。その衝撃は、DVDが日本国内で約17万枚、北米では42万セットを売り上げるという驚異の数字が物語っている。

 そして、この「アップルシード」の新作となる「エクスマキナ」が3月14日にDVD化。ジョン・ウー(プロデュース)、プラダ(衣裳デザイン)、細野晴臣(音楽監修)といった天才クリエイターたちが集結し、もちろん映像も前作よりスケールアップ。映画ファンは、二丁拳銃や鳩の登場にニヤリとするはず。前作に続き監督を務めた荒牧伸志監督に話を聞いた。

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――日進月歩のCG技術ですが、ただの続編を作るだけでは観客を満足させることは難しいですよね。前作と今作で大きく変化したところはどこですか?

荒牧監督: 「アップルシード」は“こういう映画みたことない”という感想を多くいただけたので、それと同じデータを使ってしまうと目新しさはないですよね。じゃあ、前作を超えるにはどうしたらいいか? アニメ的なルックスを持ちつつ、絵のクオリティを上げるには? インパクトを出すためには? ということを念頭に置きつつ、いろいろトライしました。技術面はもちろんですが、スタッフのスキルアップが結果的には大きかったと思います。前作のスタッフが再び集まってくれたんですが、前は作るだけで精一杯だった。今回は、一度作ったという経験や自信がありましたので、それだけ欲も出てくる。プラスαを目指すという意識の差、現場に余力があることが大きかったですね。

――デザインからリセットしてゼロからスタート、モデルデータも前作のものを使用していないとか。前作比でいうと作業量はどのくらい違いますか?

荒牧監督:  スタッフは1.5倍くらい増えたのかな。でも作業量は3倍近くになっているので、今回も修羅場でした(笑)。でも、前回の出口の見えない状態よりは気持ち的には楽でしたね。

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――続編というよりは、新作という趣でした。製作するにあたり、原作者の士郎正宗さんから何か注文やアドバイスはありましたか?

荒牧監督:  士郎先生には最初の段階からデザインを含めて、いろいろアイデアをいただきました。すごく気を使ってくださる方で、現場がとにかく主導でやってくださいということをおっしゃっていただいて、その中で自分はこういうアイデアがあるんですけど、と提示していただけて、こっちのイメージを膨らます意味でも助かりました。ゼロから見ても成立するように1本独立したつもりで作っています。もちろん前作をご覧になった方の期待を裏切らないように、続編としても違和感のないように気をつけました。

――自らプロデュースを買って出たというジョン・ウー。実際どこまで作業に加わってくれましたか?

荒牧監督: プリプロから本製作に入るくらいまでですね。絵コンテを翻訳して送ってから、ロスに打ち合わせに行ったんですが、絵コンテ全部に細かく付せんが張ってあり、驚きました。アニメーションというより、映画としてここはこうしたほうがいいとフラットに見てもらえて、僕にとっては新鮮でした。変な話ですけど、ジョン・ウーさんはキャラクターが美女美男ばかりで気になると。美女はいいけど、美男が多いのは……って(笑)。もっとコミカルで、人間味があるほうがいいとアドバイスをもらいました。

photo (C) 2007士郎正宗/青心社・EX MACHINAフィルムパートナーズ

――二丁拳銃と鳩がやたらと出てくるのはジョン・ウーへの配慮ですか?

荒牧監督: ジョン・ウーさんには「鳩を出しちゃいましたけど、いいですか?」みたいな感じだったんですけどね(笑)。面白いからファンサービスのつもりでやりました。二丁拳銃に関しては、最近のガン・アクションは横に持つのが流行りなんですよね。でも僕は真正面で並行して持つのがいいんだと思っていたら、ジョン・ウーさんも「横で持つのは嫌いなんだと」と。それを実際に彼の口から聞けたときは妙に嬉しかったですね。

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