「プレステージ」+D Style 最新シネマ情報

» 2007年05月16日 10時00分 公開
[本山由樹子,ITmedia]
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 最近、テレビ局に対してマジシャンたちが種を明かされたことを抗議したというニュースが流れた。そんな中、タイムリーに鑑賞したのが、2人の天才マジシャンが世紀のイリュージョン対決を繰り広げる「プレステージ」だ。

 舞台は19世紀末のロンドン。陽気で華やかなオーラのあるアンジャー(ヒュー・ジャックマン)と、無愛想だが天才肌のボーデン(クリスチャン・ベール)、2人の見習いマジシャンは、マジックの考案者カッター(マイケル・ケイン)のもとで、良きライバルとして修業を積んでいた。ある日、アンジャーの愛妻であり助手のジュリア(パイパー・ペラーボ)が水中脱出に失敗して、観客の前で溺死してしまう。彼女の両手を縛ったのはボーデン。アンジャーはこの悲劇をボーデンのせいと決めつけ、以降2人は血なまぐさい騙し合い、争いを繰り返していく……。

 火花を散らす主演2人にヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベール。となれば、X-MENとバットマンのアメコミ・ヒーロー対決を想像してしまうが、ここでは、ひたすら相手を陥れようと“目には目を、歯には歯を”的な、およそヒーローらしからぬバトルを展開。相手のマジックを見破るためには、どんな手段も厭わない。マジシャンとしてのプライドは失われ、醜い争いへとエスカレートしていく。マジックという一見華やかなテーマを扱っていながら、ライバルへの妬みや、マジックを生み出す苦しみなどが描かれ、それがロンドンの曇り空と相まって、誰もが腹黒くみえてくるという中身はドロドロ系。

 「メメント」のクリストファー・ノーラン監督作なので、またまた時間軸が交錯し、複雑な伏線もはりまくり。物語は二転三転し、映画そのものに仕掛けられたトリックに観る者は翻弄されるだろう。なんて書くと、身構えてしまうだろうが、トリックはいくつもあって、真相にはなかなかたどり着けないはず。呆然のオチに納得いくかいかないかは是非ご覧になって判断してほしい。ただし、ラストまで緊張感たっぷりに突っ走るので、体力が十分あるときにチャレンジを!

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プレステージ

監督・脚本:クリストファー・ノーラン/脚本:ジョナサン・ノーラン

出演:ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、スカーレット・ヨハンソン、パイパー・ペラーボ

配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2007年6月9日より日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にてロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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