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楽天と全日空、ポイント−マイル相互交換で提携

» 2004年03月25日 18時20分 公開
[小林伸也,ITmedia]

 楽天と全日本空輸は3月25日、ポイントプログラムの相互交換で提携したと発表した。全日空「ANAマイレージクラブ」のマイレージポイントと楽天の「楽天スーパーポイント」を7月1日から相互交換できるようにする。ポイント制度の魅力を利便性や高めると同時に、それぞれの顧客層を補い合うことでユーザー数アップを図る。

 7月1日からまずテスト期間として、全日空会員の1万マイルを楽天の1万ポイント(1万円相当)に先着1万人限定で交換。楽天会員は、100ポイントを50マイル(楽天での買い物200円に1マイル相当)に交換できる。交換レートは等価ではなく、「市場の実勢を考慮して決めた」(楽天の三木谷浩史社長)。テスト期間終了後、マイレージから楽天ポイントへの交換レートなどを決める。

 楽天スーパーポイントは2002年11月にスタート。「楽天市場」を始めとする楽天グループ内で商品を購入したり、有料サービスを利用すると金額に応じてポイントが付与され、1ポイント1円換算で買い物に使用できる仕組みだ。

 これまでスーパーポイントの交換対象はクレジットカード会社がほとんどで、クレジットカード会社のポイントをスーパーポイントに交換できる一方通行のみだった。スーパーポイントの相互交換システムはこれが初めてとなる。

 さらに両社サービスの連携も拡大する。4月1日から、楽天グループの宿泊予約サイト「旅の窓口」と、全日空の携帯電話向け航空券予約サイト「ANA SKY MOBILE」で相互に航空券やホテル宿泊券を販売する。それぞれへの入会促進キャンペーンなども共同で行う予定だ。

集客力拡大へリアルビジネスとの連携を強める楽天

photo 「マイレージとネットサービスのポイント制度が相互交換できる。世界に例のないアライアンス」と自信を見せる楽天の三木谷社長(右)と全日空の大橋社長

 「マイレージ、スーパーポイントともそれぞれのマーケティング戦略の核。両社とも思い切った判断をしたと思う」。3月24日、都内で開かれた記者会見で楽天の三木谷社長は提携をこう評価した。

 楽天にとって、スーパーポイントはグループ拡大の原動力だ。2003年第4四半期のグループ流通額合計は約602億円。前年同期の約2.5倍に成長した。9月に傘下に収めた「旅の窓口」の約180億円分を差し引いても2倍近くの伸びたことになり、「拡大スピードが落ちてきたのではと指摘されたが、スーパーポイント効果で伸ばしてきた」(三木谷社長)。

 全日空にとってもマイレージサービスは顧客囲い込みの最重要手段。2003年6月には、マイレージを電子マネー「Edy」に交換できる独自サービスを開始するなど積極的に拡大策をとり、今月初めには会員1000万人を突破した。

 楽天グループの会員合計はのべ約2400万人で、スーパーポイントのユーザーは女性が中心。ビジネスマンが多いマイレージとの提携で、それぞれ欠けている顧客層も補い合える計算だ。

 ただ、ポイントの相互交換はそれぞれ捻出したポイント原資が他社に流れてしまうことも意味する。それでも楽天が「思い切った判断」に踏み切ったのは、一層の集客力拡大にはリアルビジネスとの連携が不可欠と判断したためだ。「魅力的なサービスと提携することでポイント価値も上がる。需要の高いマイレージサービスとの提携で顧客層を大幅に拡大できる」(三木谷社長)。

 全日空の大橋洋治社長も「他社との差別化こそが成長の基盤」とした上で、「相互交換で確かにキャッシュは出ていくが、それ以上に顧客拡大効果のほうが高い」とメリットを強調。100億円単位の増収効果を見込んでいる。

 矢継ぎ早の買収で事業分野を拡大してきた楽天だが、グループの相乗効果を最大化する方向に舵を切り始めた。Yahoo!JAPAN追撃とネットサービスのトップ企業を目指し、三木谷社長が手綱を緩める気配はない。

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