組み込みJava,「JBlend」の明日──アプリックス新社長,抱負を語る

数々の携帯電話への採用実績を持つ組み込みJava「JBlend」。その開発元であるアプリックスが,株式公開に向けた経営強化を進めている。11月12日付けで社長に就任,公開への舵取りを行う林圭介社長に,今後の展望を聞いた。

【国内記事】 2001年11月13日更新

 J-フォンやKDDI,NTTドコモのソニー製の携帯電話のJavaVMとして,有名な「JBlend」。その開発元であるアプリックスが来年の株式公開を目指して経営体質を強化する。郡山龍会長と2人3脚で事業を進める新社長の林圭介氏に,アプリックスの展望と抱負を聞いた。

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林圭介
日本大学卒業後,マーケティング会社に勤務。データベースマーケティングの手法をはじめ,経営ノウハウを学ぶ。その後独立,広告業界でモーターショーのイベント運営を手がけ,ブランディングの手法を学ぶ。TSUTAYA onlineの立ち上げに関わったのち,アプリックスが出資するBitCashの経営を任される。ここでの手腕を買われてアプリックスに移り,11月12日付けで同社社長に就任。

ZDNet:JBlendに代表される“組み込み”製品と,WinCDRのようなコンシューマ製品を,アプリックスは主力としています。その現状と展望は?

林社長:“組み込み”というシステムは日常生活でなかなか耳にすることがありませんが,その中にあって,携帯電話やこれからの家電をより便利に,より高機能にするという点では,アプリックスのJBlendが断トツに優れていると思います。一方,コンシューマ向けのアプリックスのCD/DVDのライティングソフトは,(同市場で)かなりのマーケットシェアを占めています。

 今後のテーマは,アプリックスやJBlendのブランド力向上でしょう。今もJBlendは携帯電話の中に組み込まれていますが,それがJBlendであることを知っているエンドユーザーはほとんどいないと思います。

 しかし,今後は携帯電話だけでなく,冷蔵庫や電子レンジ,テレビなど身の回りにある家電には,すべてJBlendが組み込まれる可能性があります。(JBlendが)組み込まれることで,家電がより豊かな生活のためのツールになる。そのときには,JBlendというブランドが認知されるようになればと思っています。

 これまでアプリックスは,あまり表に出ずらいものをやってきました。しかし,現在の携帯電話の採用実績を見ても分かるように,高い技術力を元に事業を展開しています。今後は否が応でも表に名前が出てくるチャンスが増えてくるでしょう。であれば,ブランディングも含めて,もっと前面に出てもいいのではないかと考えています。

ZDNet:JBlendおよびアプリックスのブランディングを,実際にはどう展開するのでしょう?

林社長:分かりやすい例でいえば,J-フォンの携帯電話のカタログや広告です。これにはJBlendのロゴとメッセージが入っています。通常,メーカーやキャリアは内部にどんな製品を使っているか,明言したがらないものですが,この場合,「JBlendを搭載していること」が,J-フォンにとっても今展開しているJava携帯の強みを示すことになるとご判断いただき,逆に利用していただいています。

 このように,JBlendが入っている,イコール高性能であるというイメージ作りができればありがたい。当社としては,双方にメリットがあるようなブランド展開をしていこうと思っています。

ZDNet:家電への進出は?

林社長:JBlendはもともと家電でスタートしました。1999年に最初にソニーのMD DISCAMに,続いて三洋電機のデジタルフォトアルバムにも採用されました。導入実績は数々ありますが,組み込みの世界ですのでJBlendが入っていることを(当社からは)謳えない製品もあります。しかし,今後はメーカー側から見て,JBlendが入っていると言うことが商品力に繋がるというところまで,ブランド力を上げていきたいと思っています。

 家電とJavaの親和性が非常に高いことは,メーカーの方々から既に評価されています。ですから,今後,ある一定以上のコントロールが必要な家電にJBlendが採用される確率は高いでしょう。実際,多くのメーカーさんに採用されています。

ZDNet:来年には株式公開を控えています。その進捗状況や株価展望は?

林社長:CD/DVDのライティングソフトの売り上げが若干下方修正されています。これはPCの出荷台数が落ち込んだことで,バンドル版の出荷も減っているためです。ただし,利益計画上,問題があるほどのものではありません。

 来期でいいますと,組み込み製品がマーケットでの認知を急速に伸ばしています。海外マーケットが急激に立ち上がってきており,欧州は2003年がピークではないかと見ています。2002年の暮れくらいには携帯電話のJavaが急速に立ち上がってくるでしょう。米国に関してもメインは2003年だろうと思っており,既にJBlendを評価してもらっているメーカーが数社あります。

 現時点で競合相手と考えられるような(特定の)企業はありません。むしろメーカーやキャリアが社内で持っているJavaと競合することになります。しかしアプリックスは1996年からJavaの開発に取り組んでいますので,まだまだ3年くらいのアドバンテージがあります。

ZDNet:株式公開の背景はどのようなものだったのでしょうか。

林社長:私どもは,ベンチャーですが17年の社歴があります。そこで,ベンチャースピリットを持ちながらも,パブリックカンパニーを目指してもいいのではないか,と考えたのです。パブリックカンパニーにすることで1つ襟を正すこともできる,ということもありました。

 (現会長の)郡山はもともと生粋のエンジニアで,会社の経営と開発とどちらがいい,と聞いたら間違いなく開発を選ぶでしょう。一方,私は事業を運営したり,組織をマネジメントすることが得意分野です。アプリックスの事業には,それぞれの得意領域を持ち合うというスタンスで関わっています。その意味で私と郡山は事業パートナーですから,(2人で)体制を組んで一緒に公開を目指しましょうということになりました。

 株式の公開はあくまで通過点です。公開先の市場には現在,JASDAQ(店頭市場)を想定していますが,まずはここで受け入れてもらい,その後,ステップアップしていこうと考えています。

 公開は資金調達が第1の目的ではありません。パブリックカンパニーとして経営体質を作るための1ステップです。実際の公募株数はそれほど多くならないでしょう。ですから,(資金調達という面だけを見れば)第3者割当増資を行ったほうが,簡単に資金が集まる可能性もあります。

 しかし,資金調達を目的としていませんので,事業がどこまで理解されて,それが株価としてどう評価されるのかが,当社としての注目点です。事業の絶対価値を信じていますし,今後も成長していく自信があります。

[斎藤健二,ITmedia]

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