安氏はまた、日本はドキュメンテーション(文書を作成すること)にこだわる国だと笑う。「(韓国の人間には)『日本はマニュアル社会だよ』と話していた。ほかの国では“いいもの”さえ作れば資料を作らないですむところが、日本ではドキュメンテーションが求められる。その分、ごまかしが効かないところがある」
ドコモの要求する水準の厳しさを示す、端的なエピソードがある。携帯を開発すると、ソフトウェアのテストを行うが、その項目数は「多くの場合だいたい5000〜1万項目」(安氏)。ところがドコモの場合はテストが厳しく、チェック項目が「この5倍以上」(笑)だったという。
「苦労したが、我々としてもワンランクレベルアップできたと思う」(安氏)
LGがとまどったのはもう1つ、言語の問題もある。「我々のスタッフは、英語はある程度できるが日本語は使えない。日本語ができるメンバーを集めてチームを作った」。ドコモの渋谷氏も「日本語と英語の資料を作って臨んだが、やはり細かいニュアンスが抜けて伝わってしまったりということも起きた」と話す。
「ただ前述のとおり対応が早いので、こうしたコミュニケーションのミスがあってもすぐにリカバーできた」
SIMPUREシリーズで日本参入を果たしたLG電子だが、韓国メーカーは世界的に見ても高い技術力で知られる。今後、ハイエンド端末を作るつもりはないのか。
安氏は「90xシリーズのようなハイエンド端末は、壁が高いだろう」と慎重な姿勢を見せる。「まずはムーバのマイグレーションを加速させるための、低価格なFOMA端末でということだった。そして今、やっと1号機を出したばかりだ」
ただし、将来的にハイエンド端末を作る意志はあるようだ。むしろ「やる気はまんまんだ」とまで言い切る。「……ここまで言ってよかったですか?」(笑)。横で聞いていた渋谷氏は、笑いながら、未定との姿勢を崩さないながらも「検討していきたい」と応じた。
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