デザインを重視した携帯「au design project」シリーズから、また1機種面白い端末が登場した。深澤直人氏が開発を手がけた「neon」(1月19日の記事参照)は、どこから見ても四角いデザインが印象的な端末。前例のないフォルムであるため、開発にあたっては当然ながら苦労もあったようだ。
KDDIでau design projectを率いる立場のプロダクトデザインディレクター 小牟田啓博氏に、開発の現場でどんな議論があったのか聞いた。
neonの構想が誕生したのは、2年ほど前のこと。深澤直人氏が「INFOBAR」を手がけて世間の注目を集めたが、その直後にはもうneonの開発に向けてキックオフミーティングが開かれていたという。
「INFOBARが完成して、ストレートでスタンダードな端末の“ピュアな姿”という成功がイメージできた。その後単純に、2つ折りでもスタンダードかつピュアな姿を実現したい、ということで構想されたのがneonだ。圧倒的に静かな、シンプルな携帯をやりたいねということで、深澤さんに再度お願いすることにした」
ここにきて、デザインケータイとして“フラットな四角さ”をアピールする携帯も増えてきている。しかしneonの実物を見ると、その四角さはやはり群を抜いている。例えばneonのヒンジ部は、四角さを損なわないように巧みに処理されている。
「普通の携帯なら、どうしてもヒンジが見えてしまう。(隣の携帯を示しながら)これなんかヒンジが丸見えでしょ。しかし、ヒンジも含めた端末の背面というのは端末の『顔』。そこに余分なものがあってはダメだと考えた」
通常のヒンジ部は折りたたみの上下をつなぐため、“梁”のような芯の部分が外側から見える。しかしneonの場合は、T字型のヒンジがわずかに見えるだけで目立たない。もちろん開発サイドとしては、この状態できちんと強度を確保することが難しい作業となる。
小牟田氏はまた、neonのヒンジの横幅は、端末を開いたときに見える十字キーと幅を合わせてあるのだとアピールする。デザイン的な整合性のためだが「ただでさえヒンジを細くして下さい、と無理な注文をしているのに、そこで十字キーと幅を一緒にするなんていうのは至難のわざ」(同氏)。この注文に応えてくれた東芝のエンジニアは、世界一といっていいと称えた。
neonは携帯としては珍しく「完全に垂直な面」ばかりで構成されているのだ、と小牟田氏。これは普通の携帯には、あまりないことだという。
「四角い携帯といっても、端末を横にして机に置いてみると、3度ぐらい、わずかに傾いていたりする。これは金型から成型する段階に問題があるからだ」
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