WiMAXが、携帯電話業界から注目を浴びている。既報のとおり、7月からKDDIがWiMAXの実証実験を開始すると発表。既に採用を表明しているYOZANや、技術に関心を示しているイー・アクセス、平成電電に続き、また一社通信事業者がWiMAX導入に向けて動き出した。
各社がWiMAXをどのように利用するかは不明だが、ここにきてにわかにWiMAXが“次世代通信技術”の注目株に昇格してきた。事業者にヒアリングした内容をもとに、一度各社のスタンスと業界動向をまとめてみたい。
通信業界で、WiMAXというのはかなり以前から知られていた技術だ。米国では既に商用化されており、1つの基地局で広範な範囲をカバーできることから「LAN」でも「WAN」でもない「MAN」、すなわちメトロポリタンエリアネットワーク(都市単位のネットワークインフラ)を構築できるとうたわれている。
米国の地方部などでは、小規模な事業者がWiMAXの基地局を用意して手軽にブロードバンドサービスを提供しているケースもあるようだ(2003年12月5日の記事参照)。ただ国内では“無線通信インフラといえば3G”の流れがあり、さほど注目されてこなかった。
そんな中、「800MHz帯論争」を議論する場として各事業者が総務省に集まった際、各社のトップが事業方針を説明する機会があった。このとき平成電電の佐藤賢治社長は「3GよりWiMAXのほうがインフラコストが安い。我々はこの技術の実証実験を行いたい」と発言した。
日本にもWiMAXに真剣に取り組む事業者がいることを示す、興味深い発言だったが、この段階ではWiMAXが今日のように注目を浴びるきざしはあまり見えなかった。実際、携帯キャリアのバックボーンインフラを手がける事業者に当時「WiMAXは面白そうか」と聞いた際、返ってきた応えは以下のようなものだ。
「採用する事業者が増えなければ……。1社が手を挙げたぐらいでは、普及にはつながらないだろう」。当時は、あまりWiMAXを重視しない業界関係者もいたということだ。
しかしその後、YOZANがPHSサービスをWiMAXに代替させる構想を打ち出し(2月10日の記事参照)、かつインテルが宅内モデム向けを想定したWiMAX対応チップをリリースする(4月19日の記事参照)。WiMAXに追い風が吹き、流れが加速していく。
さらに、これまでW-CDMA(HSDPA)でインフラ構築すると見られていたイー・アクセスも、WiMAXでHSDPAを補完する構想を打ち出した(5月23日の記事参照)。加えて先日、ソフトバンクの役員が集まる懇親会でも、同社の通信事業を統括する幹部が「WiMAXには大変興味を持っている。携帯とネットワークを統合する構想も持っている」と発言している。そして冒頭のKDDI発表につながる。
通信技術というものは、採用する事業者が多ければ多いほど機器の調達コストは安くなる。さきほど業界関係者が「1社が手を挙げたくらいでは」と話していたが、多数の事業者が採用するなら状況は180度変わる。機器が大量生産され、安くなり、それによって採用事業者も増え、また機器が大量生産され……という正の循環に入る可能性があるわけだ。
イー・アクセスやソフトバンク、そしてKDDIに共通するのは「3GとWiMAXを融合させる」という構想を持っていることだ。この点は注目すべきだろう。
これまで書いてきたことと矛盾するようだが、「ケータイ」のサービスを考えたとき、やはり3Gのほうがスタンダードであり、技術的にもこなれている。そこにWiMAXという技術を「プラスアルファ」すること。それが次代のネットワーク構築には非常に重要になってくる。
では、具体的にどうやって融合するのか。
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