書留郵便からピザ宅配まで〜じわり広がるFeliCaの世界FeliCa Solutions Fair 2004

» 2004年10月08日 15時21分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 10月6日、大崎ゲートシティで「FeliCa Solutions Fair 2004」が開催された。「CEATEC JAPAN 2004」でも“おサイフケータイ”が多数展示されていたが、こちらは少し趣きが異なり、FeliCaカードやiモードFeliCa対応を考える事業者向けのイベントだ。そのため、FeliCaリーダーライターを使ったさまざまな機器が所狭しと展示されていた。

書留郵便を宅配ロッカーで受け取り可能に

 会場をぐるりと見渡して興味深いのは、POSレジなど「決済用途」のFeliCa対応機はもちろんだが、それ以上にFeliCaを「ユーザー認証」「セキュリティ鍵」として使う機器のブースが活況を呈していたこと。おサイフケータイはその名のせいで、サイフ=決済のイメージがつきまといがちであるが、気軽に使えて安全な「ユーザー認証キー」としての用途が有望なことが感じられた。

 代表的な例が、フルタイムシステムが展示した「フルタイムロッカー with FeliCa」だろう。これは最近のマンションによくある宅配ロッカーを、IT技術を用いて高度化したもの。携帯の液晶画面に表示させたバーコードやFeliCaカードなどを読み取らせて、解錠できる。むろん、最も手軽なのはおサイフケータイを使った場合である。

Photo フルタイムロッカー with FeliCa
Photo レシート発行口の横に、FeliCa読み取り部がある

 携帯電話の認証に4桁の暗証番号入力を組み合わせ、本人認証のレベルを強化するモードも用意していた。この2重認証により、郵政公社から「現金書留を除く書留郵便物の宅配ロッカーでの受け取り」をはじめて許可されたという。宅配ロッカーで書留郵便物が受け取れないことは、独身や共稼ぎ世帯の悩みのタネ。それを解決するという試みは非常に興味深い。

 「フルタイムロッカー with FeliCaは、宅配ロッカーのハイエンドモデル。FeliCa対応以外にもインターネット通販連携やクリーニング代行発注サービスなどがあり、かなり高機能になっている。価格は最も安いものでも120万円台と、設置初期費用がかかるが、分譲マンションや賃貸マンションの高級化、高付加価値化の中で、すでに多数の引き合いがある」(説明員)

コインパーキングのFeliCa対応は既定路線?

 コインパーキング事業者向けのFeliCa対応精算機の展示も、力が入っていた。こちらは三菱プレジョンと日本信号が展示しており、おサイフケータイでの支払いやゲート解錠のデモンストレーションを行っていた。

 三菱プレジョンのFeliCa精算機は、先日、パーク24の「タイムズドコモタワーサイド」(9月30日の記事参照)に導入されたものと同型機。駐車券を発券し、ゲート前で精算するタイプだ。電子マネー「Edy」での精算はもちろん、クレジットカードやポイントカードの利用ができるのがセールスポイントである。

Photo 三菱プレジョンのFeliCa精算機

 一方、日本信号のFeliCa対応精算機はクルマの下に設置するロックゲートを使うタイプ。街中のコインパーキングでよく使われているタイプである。こちらもパーク24が「タイムズ赤坂第12」でのFeliCa実験で使用している(5月18日の記事参照)

 精算機の導入コストが気になるが、「FeliCa対応部分のハードウェア価格だけ見れば、既存の精算機プラス10万円程度といったところ。しかし、アプリケーションの開発やセンターシステム側の対応が必要になる」(日本信号)。なお、電子マネーはアプリケーションレベルでEdyとSuica電子マネーのどちらにも対応できるとのことだった。

 取材では、パーク24以外の大手コインパーキング事業者がFeliCa対応精算機を導入するという話も聞くことができた。まだ公式発表していないため企業名は控えるが、コインパーキング事業者のFeliCa対応の流れは「いつ導入するか」という時期の違いこそあれ、ほぼ既定路線と言えそうだ。

FeliCa対応ハンディターミナルで宅配ビジネスが変わる

 コンシューマ向けとして、もうひとつ目を引かれたのが、デンソーウェーブが展示していたFeliCa対応のハンディターミナルだ。これは小型のハンディターミナルから、FeliCa端末の情報を読み取るもの。無線LANを搭載して屋内で利用するタイプと、Bluetoothを搭載して屋外で使用するタイプの2種類が展示されていた。

 中でも興味深かったのが、屋外で使用するほうのハンディターミナル。宅配便事業者や、デリバリーピザなどの宅配フードサービスでの利用が考えられている。例えばおサイフケータイなら、ユーザーに宅配ピザのFeliCa対応iアプリを「会員証」として持ってもらい、購入回数に応じた割引やiモード経由で電子クーポンの配信を行う。その上で、宅配員がFeliCa対応ハンディターミナルで情報を読み取る、といった使い方が考えられる。むろん、電子マネー決済もあるだろう。

Photo ハンディターミナルで、携帯のFeliCa情報を読み取る

 「屋外向けハンディターミナルは、センターとの通信が必要ならばBluetooth携帯と連携してその場で通信させることも可能。基本はFeliCaの通信記録を本体内に保存しておき、店舗に戻ったらバッチ処理でPOSレジに受信させるという利用方法を想定している」(説明員)

 デンソーウェーブのブースでは、ほかにもQRコードとFeliCa読み取りに対応した簡易端末などがあり、物販・物流分野でのFeliCa応用機器をアピールしていた。


 FeliCa Solutions Fair 2004では、今回紹介したFeliCa対応機以外にも、FeliCaカードのプリント機器や、オフィス向けのFeliCa電子ゲート、PCやFAX/コピー機用のFeliCa電子鍵など、さまざまなFeliCa応用機器が展示されていた。どのブースでも、必ずといっていいほどおサイフケータイによるデモが行われており、FeliCa携帯電話への期待感の高さが垣間見えた。

 NTTドコモの901iシリーズ、そして来年のau参入(9月28日の記事参照)でFeliCa携帯電話が普及すれば、決済やポイントサービスはもちろん、様々な分野で「ケータイをかざす」シーンが増えそうだ。

神尾寿――通信・ITSジャーナリスト

IT専門誌記者、大手携帯電話会社での嘱託コンサルタント業務を経て独立。通信およびITS分野のビジネスおよびニーズ分析を専門にする。IT専門誌、ビジネス誌から一般誌まで幅広く連載を持つ。IRI-コマース&テクノロジー社客員研究員。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術委員。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. 楽天モバイルのスマホが乗っ取られる事案 同社が回線停止や楽天ID/パスワード変更などを呼びかけ (2024年04月23日)
  2. シャープ、5月8日にスマートフォンAQUOSの新製品を発表 (2024年04月24日)
  3. スマホを携帯キャリアで買うのは損? 本体のみをお得に買う方法を解説 (2024年04月24日)
  4. 貼り付ければOK、配線不要の小型ドライブレコーダー発売 スマート感知センサーで自動録画 (2024年04月25日)
  5. Vポイントの疑問に回答 Tポイントが使えなくなる? ID連携をしないとどうなる? (2024年04月23日)
  6. 中古スマホが突然使えなくなる事象を解消できる? 総務省が「ネットワーク利用制限」を原則禁止する方向で調整 (2024年04月25日)
  7. 通信品質で楽天モバイルの評価が急上昇 Opensignalのネットワーク体感調査で最多タイの1位 (2024年04月25日)
  8. ドコモ、「Xperia 10 V」を5万8850円に値下げ 「iPhone 15(128GB)」の4.4万円割引が復活 (2024年04月25日)
  9. 「iPhone 15」シリーズの価格まとめ【2024年4月最新版】 ソフトバンクのiPhone 15(128GB)が“実質12円”、一括は楽天モバイルが最安 (2024年04月05日)
  10. スマートグラス「Rokid Max 2」発表 補正レンズなくても視度調節可能 タッチ操作のリモコン「Rokid Station 2」も (2024年04月25日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年