「F900i」に続き、「N900i」も今週日曜日に登場することが決まった(2月19日の記事参照)。ドコモのiモード事業部が勢力を結集して作り上げた900iシリーズ。19日の夏野剛企画部長の講演で、その開発背景の一端が明かされた。
「去年(2003年)の1月くらいに『3Gの電話機をiモードチームで作れ!』と言われて、決断を迫られたことがあった」と夏野氏は述懐する。
「そのときは、機能が505iくらいだった。僕らから見ると、3Gでせっかく待ち受け時間も長くなるし、パワーアップしないと進化になってない。時期をずらして2月にしても、最高の、究極のiモードを作ろうとなった」
もともと、“2003年セカンドモデル──秋FOMA”と呼ばれていたとおり、大きな改善点は待ち受け時間の伸び。最初に言及された際の説明は「秋にはPDCの機能をキャッチアップし、それ以降はFOMAのほうが高機能な端末になる」(津田志郎副社長、2002年12月の記事参照)だったように、まずは505i相当の機能を実現し、次のモデルで超える……というのが当初のシナリオだったようだ。名称も当初は「x2103Vとか2104Vとかだった」という。
発売時期を伸ばしても、究極を目指した900i。ポイントはどこだったのか。
「iアプリをどこまでパワーアップさせるかはものすごい悩みだった。技術的に何Kバイトになりましたじゃなくて、ヒープ(メモリサイズ)のほうが制限になっていた。とにかくドラクエを動くようにしようよ、というのがターゲットだった」
900iを最高の、そして最後のマルチメディア端末にしよう──。そんな思いが、夏野氏にはあったようだ。
「ユーザーから見るとゲームがテクノロジーのベンチになる。ユーザーには分かりやすいね。503iがテーブルゲームだったとすれば504iはある程度行ったが、ポータブルゲーム機程度。今度はポータブルゲーム機の高級機のほうまで行きたいね。家庭用コンソールゲーム機の1世代目の力があれば、大作ゲームがドンと載るんじゃないか」
900iの発表会では「ゲーム機のプレゼンをやっている気分だった」と夏野氏。900iは、並のポータブルゲーム機を凌駕する性能を手に入れた。
しかし「900iはマルチメディア化の集大成」と言う理由は別にある。
「900iを開発していて、携帯電話のマルチメディア化も行きつくところまできちゃったかなぁという感覚があった」と夏野氏は話す。
その理由は、あまりにマルチメディア端末として高機能化した携帯電話が、“ニッチ向け”に成りかねないためだ。現在、iモードユーザーのうち、有料コンテンツにお金を払っている比率は52%。これを多いと見るか、少ないと見るか。
「(iモードを)半分の方が使いこなせていない。ここから機能アップしても、うちの奥さんは使えないだろうなぁ。そこを考えなくてはいけない。(さらなる高機能化は)ニッチに向けてあってもいいが、これ以上のマルチメディア化はビッグウェーブ──主戦場じゃない、とこの2年くらい思っていた。これ以上行くと、対象マーケットが小さくなる可能性がある」
“携帯5年周期説”を唱える夏野氏は、データ通信を中心とした携帯電話のマルチメディア化はもう行き着くところまで来たと見ている。買い切り制スタート後の携帯の爆発的普及、それが通信インフラとしての5年間だ。次の5年間はiモードを中心としたITインフラ……。
iモード登場からちょうど5年、次の5年は何の年になるのか?
「次の5年間で生活インフラとしての携帯電話を作りたい。大きなきっかけがFeliCaだ」
iモードが作ったビッグウェーブは、7000万人近くが利用する巨大なITインフラに結実した。しかしまだ“全員が手放せない機器”にまではなっていない。
生活インフラとしての携帯電話──そのために夏野氏が思い描くのが、携帯の財布化だ。
「これからは現実世界で携帯を使っていく。携帯の財布化を大きな柱にしよう。これからの5年はリアルライフとの連動。それがFeliCaを中心に始まる。2009年にはほぼすべてのところで、携帯電話で金が払える。どこでも携帯を持っていれば財布はいらないという世界に持っていくのがターゲット」
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