Mobile:NEWS 2003年1月31日 09:01 PM 更新

BREWとは何か?──Javaとの違い

auの「A5304T」が対応したBREW。しかしBREWとは何なのだろうか。Javaとはどこが違うのだろうか。一般ユーザーの視点と、携帯アプリケーションのビジネスプレイヤーの視点からまとめてみた

 KDDIがダウンロードに対応したBREW端末を発表した(1月29日の記事参照)。しかし、“BREWとは何か?”というとなかなか分かりにくい。

BREWとJavaは何が違うのか

 BREWの説明として、リリースには「携帯電話向けアプリケーションプラットフォームである」と書かれている。気になるのは、携帯電話向けJavaとの違いだ。

 携帯向けのアプリケーション……といえば、一般にはJava。KDDIもezplusという名称で2001年7月からJavaサービスを提供している(2001年6月の記事参照)。どちらも、Webサーバからゲームなどのアプリケーションをダウンロードして端末上で動作させられる仕組みである。

アプリケーション対応機種開始時期稼動台数
au・BREWA5304T(東芝)2003年2月下旬
au・ezplus(Java)A5000系、A3000系、C5000系、C3000系など2001年7月約400万
ドコモ・iアプリ(Java)503i系、504i系2001年1月1600万
J-フォン・Javaアプリ(Java)J-5x系、J-0x系の一部2001年6月約500万

ユーザーから見ると……

 BREWとJavaの違いは、それぞれの立場によって異なる。まず端末を利用するユーザーから見た場合、BREWもJavaも似たようなものだと思えばいい。その上で、違いは大きく3点ある。

  • BREWは公式サイト提供のみ
  • BREWのほうが高速で、機能も豊富
  • BREW端末かJava端末かどちらかを選ぶことに

 一般の制作者がアプリケーションを作って配布できるJavaと異なり、BREWは必ず通信キャリアの審査を通す必要がある(2001年8月の記事参照)。基本的には公式サイトからのダウンロードとなり、Javaのような“無料アプリケーション”は少なくなるだろう。

 キャリアの審査があるのは、端末内部を操作できるアプリケーションが作れるなど、機能が豊富なためだ。制限の多いJavaと異なり、BREWではネイティブソフト(端末にあらかじめ入っているソフト)に近い自由度がある。BREWアプリからBREWアプリを動かしたり、Javaでは難しいプッシュ型アプリケーションも作成できる(2002年7月の記事参照)。

 例えば、インスタントメッセンジャーのようなソフトを考えてみよう。Javaではサーバに定期的にアクセスして、自分へのメッセージがないかどうか確認しなくてはならない。つまりメッセージが来ていなくても通信料がかかる。BREWで作れば、メッセージがあったらサーバから端末に通知することができる。自由なプロトコルを利用できるBREWならば、動画のストリーミングプレーヤーさえ開発可能だ。

 ただし、端末を買うときにはBREW端末にするかJava端末にするかを選ぶ必要が出てくるかもしれない。今回のBREW対応1号機「A5304T」はJava非対応。KDDIでは、一部のツインCPU搭載機種を除いて今後BREW対応とすると話している。日立製の「A5303H」のように、アプリケーションプロセッサを積んだツインCPU端末の場合、Javaに対応する形になる。

コンテンツプロバイダから見ると……

 コンテンツプロバイダなど携帯プラットフォーム上でビジネスをやることを考えると、BREWへの対応は決断が必要かもしれない。

  • JavaとBREWは互換性低い
  • BREWのほうが自由度が高い
  • KDDI以外の国内キャリアはBREW対応しない

 まず、BREWアプリケーションはC言語やC++言語で記述される。JavaよりもC言語は扱えるプログラマが多いが、逆にJavaへの移植は多少やっかいになる。ドコモやJ-フォン向けのアプリケーションがJavaメインであることを考えると、使い回しの利くJavaにも魅力がある。

 ただしBREWのほうが凝ったアプリケーションが作れるのも事実。au端末で比べた場合、JavaよりBREWは圧倒的に速いため、アクションゲームなども作りやすい。とはいえ、アプリケーションプロセッサ上で動くJavaよりは速度が落ちる場合もある。

 注意したいのはBREWを開発したのは米Qualcommだということ。現状BREWを動作させられるのは国内ではQualcommのチップを搭載した端末──au端末だけとなる。Qualcommは「他社のチップにもBREWを移植中」としているが、ドコモやJ-フォンの端末上でBREWが動くようになることは想定しにくい。

 ツインCPUの端末ではJavaがメインなのも、現在のところアプリケーションプロセッサ上でBREWが動かないため。アプリケーションプロセッサは、現在日立製作所の「SH-Mobile」が大きなシェアを持っており(2002年11月の記事参照)、TIの「OMAP」やIntelの「XScale」も携帯向けをうたっている。QualcommのアプリケーションプロセッサならばBREWが動作しそうだが、Qualcommは当初予定していたアプリケーションプロセッサの開発を止めている。

 一方、プラットフォームの規模としては、BREWはかなりのものになりそうだ。KDDIは年間でおよそ700万台のBREW対応端末を販売していく予定で、これまでJavaが対応していなかったローエンド端末にもBREWを載せていく。400万台に留まったJavaに比べ、今後BREWの急速な普及が予想される。

 また、海外のCDMAキャリアへの展開も期待できる。KDDIは、韓国KTFや中国の中国聯合通信(チャイナユニコム)と「BREW Operator Working Group」を結成。今後アプリケーションの海外流通に向けて標準化を進めるという。

 ドコモと共にJavaでヨーロッパに進出するか、J-フォンを通じVodafoneにJavaで進出するか。はたまたBREWで中国、韓国、米国に打って出るか。海外進出への選択肢は多様化した。

BREWかJavaか

 以前、「BREWとJavaは比べるものではない」と説明されたこともあった(2002年3月の記事参照)。しかし、結局はユーザーもコンテンツプロバイダもBREWかJavaかを選ばなければならないことになりそうだ。

 確かに、BREW上でJavaVMを動かし、その上でJavaアプリケーションを動かすことも可能(2001年2月の記事参照)。しかし「速度が遅くて使い物にならない」と、KDDIの関係者は説明する。ARM9コアを内蔵した高速なベースバンドチップが搭載される年末のau端末以降は可能性があるかもしれないが、基本的にJavaとBREWは別のプラットフォームと考えた方がいい。

 KDDIはBREW端末の普及に応じて、コンテンツも増やしていく考え。当初20本程度からのスタートだが、年末には100本ほどにもっていく。また「400万のユーザーがいるJavaを見捨てることはない」と説明している。

 ともあれ、KDDIの年間販売目標700万台という数字を見る限り、次第に“auのアプリケーションプラットフォームはBREW”ということになっていきそうだ。



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関連リンク
▼ KDDI
▼ BREW 日本語解説ページ

[斎藤健二, ITmedia]

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