Mobile:NEWS 2002年8月6日 08:25 PM 更新

自律測位でさらに進化する、gpsOne

「GPSケータイ」に使われているgpsOne技術が2003年の年初には次のステップに進もうとしている。自律測位機能を備えると共に、安価なデータ通信専用通信方式「1x EV-DO」との組み合わせで、携帯電話以外への展開を積極的に進める構えだ

 KDDIの「GPSケータイ」に使われている、米Qualcommの位置測位技術gpsOneがさらに進化しようとしている。2003年には端末単体で測位が行える自律測位機能を追加し、測位時間も1−2秒まで短縮する。

 gpsOneの技術的なメリットの1つは、位置の測位計算を端末ではなくサーバで行うことだ(2001年4月の記事参照)。これによって、端末にGPS機能を組み込んでも、サイズやコストの増加が抑えられている。

 しかし、測位のたびにサーバとの通信が発生するため、通信コストがかかる。また、測位にかかる時間も10秒程度必要だ(2001年12月の記事参照)。

自律測位で、連続測位を可能に

 自律測位機能はそれらの問題を解決する手段の1つとなる。クアルコム・ジャパンのビジネス開発担当部長である任田正史氏が、日本オラクルの「Oracle モバイルロケーションセミナー」で語ったところによると、「(自律測位機能が追加されると)最初の1回は通常の測位だが、その後はGPS衛星が見えている限り、サーバを利用せずに測位が行える。連続測位が可能で、通信コストも発生しない」という。

 KDDIでgpsOneを使ったソリューションを企画している山野隆二氏(ソリューション事業企画本部)によると、gpsOneを使った測位にかかるパケット料金は現在、1回当たり5−8円。利用頻度が少なければ無視できる程度のコストだが、「(連続して測位を行う)車のトラッキングなどだと、今の料金だと苦しい」(任田氏)。自律測位機能を使えば、カーナビのように地図の上に自分の位置を常時表示するといったことが通信コストなしで実現できる。


最初の測位時にサーバからGPS衛星の情報を利用するのは変わらないが、いったん衛星を捕捉してしまえば、測位は端末だけで行えるようになる

 ただし問題点もある。測位のための複雑な計算を端末内で行うため、「端末のCPU負荷が高い」(任田氏)ことだ。そのため「用途に応じて使うべき」(同氏)だという。

 当初の米Qualcommの発表では、2002年末には自律測位機能が実現できるはずだった。現状は少々遅れ気味で、2003年にずれ込むもよう。新機能を搭載したモデムチップとしてではなく、ファームウェアのアップデートで対応する予定だが、「どのモデムチップから対応するかは決まっていない」(同氏)。また、KDDIが自律測位機能を採用するかどうかは未定だという。

1x EV-DOとの組み合わせで、常時トラッキングも可能に

 自律測位と共に、gpsOneの利用用途を広げると見られているのが、データ通信に特化した通信方式であるCDMA2000 1xEV-DO(EV-DO)だ(7月19日の記事参照)。

 従来の通信方式に比べ、大幅なデータ通信コストの削減につながるため、「gpsOneがEV-DOと組み合わさると、通信コストの問題が改善される」と任田氏。これにより、大きな市場として期待されているのが携帯電話以外の専用端末だ。

 「携帯ゲーム機や、デジカメでもEV-DOを載せようという動きが始まっている」(任田氏)。もちろん、一番大きなマーケットはカーナビ。EV-DOとgpsOneを組み合わせれば、運用コストを抑えた通信カーナビが実現できる。

MVNOへの積極展開でgpsOneの応用範囲が広がる

 携帯電話以外へのネットワークの利用については、KDDIも早くから向けて動いている(2001年12月の記事参照)。山野氏が「モジュールビジネス」と呼ぶもので、KDDIは表に出ず、インフラと通信モジュールを提供することでビジネスにしていくという構想だ。

 セコムが提供している、gpsOneを使い、車両の盗難や子供やお年寄りの位置を確認できるサービス「ココセコム」がその1例(2001年7月の記事参照)。ココセコムはKDDIの通信インフラを使っているが、エンドユーザーはKDDIとの契約を結ぶ必要はなく、端末もサービスもセコムのブランドで提供される。通信キャリアのネットワークを借りた、分野特化のサービス業者、MVNO(Mobile Virtual Network Operator、用語)の一種といえる。

 8月6日に発表されたパイオニアの通信カーナビも、KDDIの通信インフラを使うが、表に立つのはあくまでパイオニアだ(8月6日の記事参照)。


クアルコムの任田氏が示した資料より。MVNOを活用することで、販売チャネルやサポートコストを必要とせず、組み込み向けの通信モジュールを提供できるようになる

 組み込み用途に関しては、特にMVNOのメリットは大きい。AirH”の通信回線を日本通信などMVNOに提供しているDDIポケットによると、「サービスセンターなどサポートにかかるコストは、基本料金のうちの2割程度を占める」という。さらに販売奨励金のような慣習も残る販売コストも、キャリアブランドで端末を提供する際の負担となる。通信モジュールを組み込んで利用する場合、これらのコストを省くことが可能となる。

 「ありとあらゆる動くデバイスに無線機能を組み込む。そこに位置情報がつくことで、さらに便利になる」。クアルコムの任田氏は、そんな世界を想定する。音声通話市場が飽和に近づく中、テレマティクス市場を狙っているのはKDDIだけではない。しかしMVNOの活用や、gpsOne、EV-DOといった技術が、新市場でのKDDIの強みとなるのは間違いない。

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[斎藤健二, ITmedia]

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