「レジリエンス」ブームとサントリーの微妙な関係:スピン経済の歩き方(1/4 ページ)
「レジリエンス」という言葉をご存じだろうか。心理学用語で「精神回復力」と訳され、欧米では古くから定着している。日本でもメディアが報じたことで話題になっているが、このブームはサントリーにとって“追い風”になるかもしれない。その理由は……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
先日、日本テレビの『世界一受けたい授業』を見ていたら三時間目に、《新年度は心の病に要注意! 折れない心を育てるレジリエンスの鍛え方》というのをやっていた。
ご存じの方も多いだろうが、レジリエンス(resilience)というのは「精神回復力」なんて訳される心理学用語のことで、乱暴な言い方をしてしまうと「ハートの強さ」だ。
欧米ではかなり古くから定着している概念で、ホロコーストを経験した孤児のなかでも、過去にとらわれて苦しみ続ける人もいれば、過去をふりきって幸せな人生を謳歌(おうか)している人もいるということで、この「差」ってどこからくるのというところから研究が本格的に進められたという。
番組でも、ソチ五輪のショートプログラムで転倒やミスを繰り返してしまった浅田真央選手が、翌日のフリーで完璧な演技をしたことが世界で「なんとすごいレジリエンスだ」と称賛の嵐だったといったエピソードを紹介して、欧米では一般常識ですけど日本はまだまだ定着してませんね、という感じで紹介されていた。
確かに医療関係者以外で「レジリエンス」と言われ始めたのはこの1年くらいだ。2014年4月にオンエアされたNHKの『クローズアップ現代』で《“折れない心”の育て方 〜「レジリエンス」を知っていますか?〜》というのが放映されたあたりからメディアにちょこちょこと名前を見るようになってきた。
個人的には、この「レジリエンス」、非常に大切だと思っている。自殺やうつという問題がこれだけ増えているなかで、ポキンと折れない心をつくるという教育はそれこそ国をあげて取り組まなければいけない課題かもしれない。
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