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内示を受けて転職したいと思ったあなたが考えるべき、ただ一つのことサカタカツミ「新しい会社のオキテ」(1/2 ページ)

年度末のこの季節、内示を受けて迷っている人も多いと思います。不本意な異動を命じられて「納得いかない、転職したい」と思った時、あなたがまず考えるべきこととは?

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 異動の季節になると「転職したいので、相談に乗ってください」というお誘いが多くなります。今年もたくさんの相談を受けています。


異動の季節、「転職したい!」と思ったらまず考えることとは?(写真はイメージです)

 年次の浅い若手社員だと「以前から狙っていた部署に、また配属されなかった」「今と同じ場所で同じ仕事をやっていても、成長が実感できない」「次の異動まで同じ仕事をやると思ったら、その突きつけられた現実に嫌気がさした」という理由、つまり「やりたい仕事ではない」のが転職したくなる原因。異動はキッカケにすぎません。

 一方、中間管理職になると、異動そのものが理由になって転職を希望する人が増えてきます。

 例えば「手塩にかけて育ててきた製品が、やっと軌道に乗ると思ったら、その部署から外された」「今回の異動で組織が誰を大事にしていて、誰はそうでもないのか、という優先順位があからさまになってしまった」「自分の配下がすべて自らの意図とは違うメンバーになった」など、異動とそれに伴う配属から、ある種のメッセージを読み解いて「転職したい」と考えるようです。

 今週は「こんな内示を受けてしまった、だから転職したい」と考えたあなたに贈る「ちょっと待って」というお話を短く。

転職は以前ほど慎重になる必要もなくなった、のは事実

 かつて転職を繰り返している人は、人材市場でも価値が下がり、健全なキャリアを形成する意味合いからもマイナスであると言われていました。おおむねその傾向は、今も変わりません。転職回数が多い、というだけで、書類選考の時点で弾かれてしまうというケースは、枚挙にいとまがないからです。

 しかし「転職回数が多い=門前払い」という、一昔前のような状況ではなくなりつつあるのも事実。恒常的な人手不足で、求職者サイドの売り手市場になっていることや、保持しているスキルの価値が高く、多くの企業に求められているものであれば、より条件のよい職場に移るのが一般的になり始めていますから。以前ほど「転職する=人生の一大事」とは言えなくなってきているのかもしれません。

 とはいえ、ここではやはり「慎重に考えたほうがいい」とお勧めしておきます。特に、管理職の転職は慎重になったほうがいい。理由はシンプルで「もう一度、ゼロからやり直すという覚悟を持てるのか、否か」という質問に尽きます。いや、管理職の場合、ゼロどころかむしろ、マイナスからのスタートといってもいいくらいです。

今の地位とは、給与や役職のことだけではない

 ちなみに、若手社会人から相談を受けたとしても、わたしは積極的に転職を推奨することはありません。なぜなら「今いる場所で、もうできることはなくなった」と思えるまでは、そこで留まり、いろいろなことを吸収することがベターだと考えているからです。

 なので、相談を受けても「まずは、今の職場で得られることを、すべてリスト化してみて。その上で、別の場所でゼロからスタートすることと天秤にかけて、どちらが重くなるかをよく考えてみて」とアドバイスをしています。とはいえ、年次の浅いビジネスパーソンだと、そもそも「得ているもの」が少ないので、失うものもない。

 しかし一定年齢に達した中間管理職だと、その場所で築き上げてきたものも大きく、転職することでそれを失うことになります。給与や役職だけではありません。人間関係ひとつとっても、結局、ゼロから築き直す必要がある。例えば、新しい職場には人脈がありませんから、なにかしようと思っても、誰に根回しをして誰に応援を仰げばいいのか、まるで分からない、手探りの状態が続くことになります。今までと同じパフォーマンスが出せるようになるまでには、相当の時間がかかります。

 日常生活も同様です。事務処理のルール一つとっても、企業によってまったく異なるのが通例で、それに慣れるまでのストレスは相当なものです。それこそ、若手社会人なら新しくやり直すことに抵抗はないかもしれませんが、周囲から、その能力やスキルへの期待を背負い、素早く成果を発揮しなければならないポジションに就くであろう中間管理職には、ささやかなことでも大きな負担になるはず。

 そういう「入社以来、今まで作ってきた、自分なりの仕事のスタイルやルール、環境」をすべて失っても新しい職場に行きたいか、ということを慎重に考えなければなりません。

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