沖縄の特区制度、なぜ事業認定進まぬ?:情報特区は施行後13年で初(1/2 ページ)
沖縄県に独自の特区制度があるのをご存じだろうか。2002年に施行が始まったものの、事業認定を受けた企業は極めて少ない。その理由とは――。
2015年2月3日、沖縄県に定められている「情報通信産業特別地区」において、ネットワーク事業を手掛けるオキットが初めて特定情報通信事業者の認定を受けた。同制度が2002年にスタートしてから実に13年の月日が経ったわけである。
なぜここまで時間を要したのかを説明する前に、まずは特区制度の内容を紹介しよう。
沖縄の自立的発展を目指し、内閣府が2002年4月に施行した「沖縄振興特別措置法」。その法案の中で定められたのが、他の都道府県にはない沖縄独自の制度である特別地区だ。「経済金融活性化特区」「国際物流特区」、そして「情報通信産業振興地域・特区」を3本柱に、企業に対して税制などの優遇措置を行うというものである。
経済金融活性化特区の指定地域は名護市で、対象は金融関連産業、観光関連産業、製造業といった業種の企業。40%の所得控除のほか、機械や器具の投資税額控除、特別償却などの優遇措置がとられる。
国際物流特区は、那覇市、浦添市、豊見城市、宜野湾市、糸満市、うるま・沖縄地区が対象。業種は製造業や梱包業、倉庫業、航空機整備業など。優遇措置は経済金融活性化特区や情報通信産業特区とほぼ同じ内容である。
情報通信産業については、新興地域と特区に分かれており、指定エリアも広い。新興地域は、宜野湾市、石垣市、糸満市、沖縄市、宮古島市など24市町村、特区は那覇・浦添地区、名護・宜野座地区、うるま地区の5市町村が対象となる。対象企業も異なり、新興地域は、情報記録物の製造業、電気通信業、ソフトウェア業など。特区では、データセンター事業者やインターネットサービスプロバイダー(ISP)、そして今回認定を受けたオキットのようなインターネットエクスチェンジ(IX)事業者など、大規模システムやインフラを運用するような企業が対象である。
「国の支援ではなく自立的な経済発展が重要であることから、沖縄特有の特区制度が設けられた。認定企業のメリットは大きい。所得控除が40%なので、特区に進出すると法人税は約20%になる。これは日本でもまれだ」と、内閣府 政策統括官(沖縄政策担当)付 産業新興担当参事官室の鈴木洋一郎参事官は説明する。
例えば、所得金額が1200万円、法人税額が432万円の企業の場合、所得控除額は480万円、法人税額は約259万円(法人税率を36%で計算)で、約173万円の減税効果が得られる。
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