メモを取らない困った部下と、おいしいコーヒーの入れ方の関係:サカタカツミ「新しい会社のオキテ」(2/2 ページ)
「メモを取れと言っているのに、何度言ってもそうしない」と、部下を叱ったことはありませんか。なぜ何回言っても分からないのか? 実はそれはシンプルな理由なのです。
伝える側は、受け取る側を教育しなければならない
そこまで教えないといけないのか、という声も聞こえてきそうですが、教えるべきでしょう。相手が受け取りやすい形に情報を加工してから、提供したとしても「どのように受け取ればいいのか」相手が分からないなら、意味がありません。このコラムで何度も書いていますが、相手に「このくらいのことは分かっているだろう」と、自分勝手な判断で期待してはいけないのです。
情報を伝達する側は、それを受け取る側をキチンと教育する必要がある。そうしないと、手間をかけて教えたとしても、まったく伝わらないという悲劇が起きてしまいます。そんなことは身について当然だろうと、思いたい気持ちは分かります。が、いま目の前にいる若手、部下や後輩が、情報を受け取る姿勢が身についていないとしたら、誰も教育をしてこなかった、もしくは、適切な教育をしなかった結果なのです。当然のことが当然になっていなかった、としたら、皆さんがそれを当然にしてあげなくてはなりません。まあ、面倒だと感じる気持ちは分かりますが。
一度教わったことで、また分からなくなったら周囲の誰かに聞けばいい、という態度では、周囲の人に迷惑をかけてしまうこと。迷惑というと軽く聞こえるが、聞くというのは相手の時間を奪うことであり、その時間は会社が対価を払っているのだから、実質的に損失を生み出していること。そのためには指示された時点で仕事について理解をし、一度教わったことを二度聞くことのないようにメモを取ること。ひとつひとつ丁寧に意味を説明することで、部下が納得して行動できるようにするのも、イマドキの上司の仕事だと、わたしは考えています。
ちょっとだけうがった見方と、コーヒーの美味しい入れかた
……とここまでは、上司側に問題がないという前提で書き進めてきました。
しかし実際には「メモを取りにくい指示しかできない上司」だったり「メモを取ることだけで、話を聞いている姿勢が素晴らしいと受け取ってしまう上司」の可能性もあります。また「メモを取っても、仕事の役に立たない話ばかりの上司」だとしたら、耳にタコができるくらいメモを取れといわれても、その効能は信用できないし、頑張ってメモを取ろうとも思わないですよね。ご用心。
ちなみに、冒頭のコーヒーのおいしい入れかたについて。話を聞きながら取る行動がいろいろ、と書きましたが、おいしく入れられる人は「お湯が注がれているコーヒーのドリッパーの観察に必死な人」です。私は、お湯を注がれるコーヒー豆がどういう状態になっていればいいのかを説明しながら入れているので、その状態が再現できるように観察しながら話を聞くのがベスト。そのあと、忘れないように自分でメモを取る人は、よそでもコーヒーを入れるのが上手だと褒められているようです。
著者プロフィール:サカタカツミ
クリエイティブディレクター。就活や転職関連のサービスをプロデュースしたり、このような連載をしていたりする関係で、そちら方面のプロフェッショナルと思われがちだが、実は事業そのものやサービス、マーケティング、コミュニケーションの仕組みなどを開発するのが本来の仕事。
直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」や「MakersHub」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』、『就職のオキテ』。この連載についても、個人的に書いているブログでサブノート的なエントリーを書く予定。Twitterアカウントは@KatsumiSakata。
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