ぜんぶ妖怪のせい? 正しく使おう「妖怪ウォッチ教育法」:問題の外在化(2/4 ページ)
テレビだけにとどまらず、映画も大ヒットしている『妖怪ウォッチ』。しかし「なんでも妖怪のせいにする」子どもが増えていて、問題視されているのだ。妖怪ウォッチが引き起こした「何でも妖怪のせい」現象を心理学的に解明してみると……。
問題の外在化という考え方
心理学の中には、問題の外在化という考え方があります。有名な事例に「スニーキー・プー」というものがあります。簡単に説明します。
ニックという6歳の男の子がいました。彼は「遺糞症」(いふんしょう)と診断される問題を抱えていました。「遺糞症」とはトイレで排泄(はいせつ)することができず、家のいたるところにウンチをしてしまうという症状です。さらには、ウンチを壁に塗ったり、引き出しにしまったりしてしまいます。数々のセラピストが彼を治そうとカウンセリングに取り掛かりましたが、誰も彼を治すことはできませんでした。次第に彼の両親も疲弊し始めました。
図で説明すると以下の通りです。親がニックの内面にある遺糞症という症状を必死で直そうトスしています。効果が出ればいいのですが、効果が出ないとニックの人格そのものまで否定しかねない構図です。
そんな中、ホワイトというカウンセラーがある方法をとってから、ニックの症状は大幅に改善しました。その方法とは、ウンチを壁に塗ったり、引き出しにしまったりしているのは、「スニーキー・プー」の仕業だと考えるように提案しました。
ニックの内面に問題があるわけでなく、問題行動そのものが問題なのだというふうに発想の転換を図ったのです。図にすると以下の通りです。子どもに問題があるのではなく、子どもと一緒に問題を解決していく構図になっていることが分かると思います。
こうすることによって、ニックはただカウンセリングを受けさせられる受動的な存在から、自ら「スニーキー・プー」に対処していく能動的な存在へと変貌しました。
また、彼の両親も、ニック自身を変えていかなくてはいけないという考え方から「スニーキー・プー」さえ退治すればいいという考え方に変わりました。問題に振り回されて途方に暮れるだけだった家族が、問題に協同で立ち向かっていく家族に変貌しました。
このような考え方を「問題の外在化」と呼びます。
もっと簡単な例としては、節分の豆まきでの一幕があるでしょう。例えば、学校の先生が、「みなさんの心の中にはどのような鬼がありますか?」と子どもたちに尋ねます。
すると、子どもたちは、1人でさまざまなことを考えるでしょう。そのあとに先生はきっと「それでは、みなさんの心の鬼を退治しましょう」と言って、先生自ら鬼に扮し、子どもたちから豆を投げつけられます。子どもたちが心の中に抱いていた鬼は、先生という姿になって外在化し、豆を投げつけることで解決していくのです。
このように、問題の外在化の考え方は妖怪ウォッチの考え方とかなり近いのです。
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