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Webサービス「愛と家のスワッピング」を利用すると、“ムダ”が見えてきた烏賀陽弘道の時事日想(特別編)(1/5 ページ)

Webサービス「Love Home Swap」をご存じだろうか。直訳すれば「愛と家のスワッピング」。決してエッチなサイトではなく、世界の旅行者がそれぞれの家を交換して、宿代を節約しようというサービスだ。筆者の烏賀陽氏はこのサービスを利用したところ……。

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烏賀陽弘道(うがや・ひろみち)氏のプロフィール:

 フリーランスの報道記者・フォトグラファー。1963年京都市生まれ。京都大学経済学部を卒業し1986年に朝日新聞記者になる。週刊誌『アエラ』編集部などを経て2003年からフリーに。その間、同誌のニューヨーク駐在記者などを経験した。在社中、コロンビア大学公共政策大学院に自費留学し、国際安全保障論で修士号を取得。主な著書に『Jポップとは何か』(岩波新書)、『原発難民』(PHP新書)、写真ルポ『福島飯舘村の四季』(双葉社)、『ヒロシマからフクシマヘ 原発をめぐる不思議な旅』(ビジネス社)などがある。


 ずっと「インターネット・ディストピア」(暗い未来)の話ばかり書いているので(関連記事)、新年くらいは日本のお正月らしく明るい話をしよう。これから期待できるマスメディア、インターネットの話題である(新聞、地上波テレビ、書籍・雑誌など旧来型マスメディアにはもう明るい未来はないので最初から話題にしません。ごめんなさい)。

 この夏、私はパンクロック少年だった十代から苦節30年余にしてようやく長年の夢をかなえた。ロンドンに2週間行って来たのである。米国・アジアなど外国はあちこち取材で行っているのだが、仕事優先で後回しにしているうちにロンドンだけは行く機会がなかった。

 それがなぜ今年の夏になって、と問われれば“Love Home Swap”というWebサービスに出会ったからである。直訳すれば「愛と家のスワッピング」。いやいや、決してエッチなサイトではありません。世界の旅行者がそれぞれの家を交換し宿代を節約しようというマジメなサイトなのである。

 会員登録したあと「これがリビング」「これがベッドルーム」と東京の自宅の写真を撮ってサイトにアップしておく。そして「旅行に行きたい都市」「行きたい期間」を掲示しておく。すると世界のどこからか「私と家を交換しましょう」という人がメッセージを送ってくる、という仕掛けだ。

 私は「ロンドン」「ニューヨーク」「ベルリン」「パリ」など「行きたい旅行先」を登録しておいた。すると5月ごろ、ロンドンに住むレイチェルという30歳前後の女性から「私はトウキョウを訪ねるのが長年の夢でした」と丁寧なメッセージが来た。が、彼女は小学校の教師をしているとかで、7〜8月にしか休みが取れないという。困った。こちらは自営業なのだから、休みはいつでも取れる。わざわざ飛行機代が高騰する夏にロンドンまで飛ぶ必要がない。

 しかし彼女のアパート(イギリス語では「フラット」)を見て考えが変わった。テムズ川の南、ターミナル駅から2駅という都心から至近の緑深い住宅街、れんが造りのフラットの3階である。当たり前なのだが、まさにロンドンっ子の暮らしそのものではないか。暖炉がありテラスがあり、テムズ川の向こうのロンドンの街に沈む夕日が実に美しい。かつて3年間ニューヨークに住んで分かったのだが、アパートに住み買い物をしてベッドを直しゴミを出す「地元民」になると、その地の暮らしがよく分かる。旅行者としてホテルに泊まるのとはまったく違う体験なのだ。

Webサービス「Love Home Swap」を使って、ロンドンに近い住宅街で“地元民”として暮らすことに(写真は筆者が撮影)

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