物流が止まる、経済が止まる──「鉄道貨物輸送の二重化」を急げ:杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)
台風18号が起こした土砂崩れで、東海道本線の一部が10日間にわたって不通となった。旅客輸送は振り替え輸送で対応できたが、貨物輸送は極めて厳しい事態になり、大きな課題を残した。筆者が提案する解決策は「東海道本線の二重化」。その理由は……。
一方、貨物輸送は大混乱となった。東海道本線は貨物列車の大動脈である。1日あたり約90本の貨物列車が走り、輸送力は12フィート(5トン)コンテナで約1万1000個。5万5000トン分の輸送が止まった。これはJR貨物が1日で扱う貨物コンテナの半分に相当する量という。国鉄時代、スト権ストによって8日間にわたって貨物列車が止まり、これが荷主の反感を買ってモータリゼーションが一気に進んだ。あの悪夢より2日も長い。JR貨物にとって、たいへん厳しい事態となった。
もちろんJR貨物はこの事態を看過していない。10月7日からさっそく代替輸送に着手。東京(大井)―静岡間でトラック輸送を開始。5トンコンテナ片道最大200個分を確保。静岡から先も臨時貨物列車を設定してトラックからコンテナを引き継いだ。東京(大井)―福岡間では、日本海沿岸経由の臨時列車を設定。1日1往復で5トンコンテナ片道最大100個分。名古屋―札幌間も日本海沿岸経由で1往復、5トンコンテナ片道最大100個分を設定。合計で最大800個分の輸送を確保した。手際はよかったけれど、本来の約1万1000個の1割にも満たない。
10月9日には、さらに中央本線経由の迂回列車などを増発。さらに東京(隅田川)―金沢、大阪―金沢間の定期貨物列車を活用し、大阪―隅田川の輸送ルートを確保。これで最大1990個の輸送量を確保した。たいへんな努力だったと思う。が、やっぱり1万1000個にはほど遠いのであった。
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