トヨタ流米作りで“ニッポン農業”を強く、元気に:“カイゼン”と“ビッグデータ”を稲作へ(2/4 ページ)
トヨタ自動車が新境地に挑む。農業分野にカイゼン活動を持ち込むとともに、クラウドとビッグデータを駆使した稲作支援サービスを開発。早くも劇的な成果が出ているという。
農作業の「見える化」でカイゼン活動
先述した多くの米生産農業法人と同様に、当時の鍋八農産も、約800戸の農家から約2000枚の水田、耕地面積にして約170ヘクタールを請け負っていた。それを7〜8人の作業員で担当するわけだが、作業現場の管理は複雑化していた。また、作業現場を示す地図は手書きだったこともあり、作業現場を間違えたり、見つからずに帰社してしまったりという、あってはならないミスが多発していた。こうした事態が依頼主との信頼関係に大きく影響していたことは言うまでもない。
そのような状況を目の当たりにした喜多氏は、コストダウンや作業の標準化を行うべく、トヨタで課題を探す際に必ずとる手法である「見える化」を鍋八農産のあらゆる業務プロセスに対して行った。
まずは、いろいろと話を聞く中で、コストがどのくらいかかっているのかという質問を喜多氏が投げ掛けたところ、明確には把握していなかったという。そこでコストの見える化という観点で、あらゆる作業工程をビデオ撮影し、手順書を起こすという作業を1年かけて行った。
「コストの算出方法もこちらから提案して見える化を進めていった。これによって、どこにどれだけの費用がかかっているのかという問題意識が彼らに芽生えた」(喜多氏)
きちんと作業工程などを管理すればコストダウンにつながることが、次第に鍋八農産の中でも共通認識となっていったのである。
次に、作業の標準化である。従来、鍋八農産では現場の作業手順ややり方は統一されておらず、作業者によってばらばらだった。そのため作業の進ちょくなどに個人差が出てしまうことが往々にしてあった。「トヨタでは、工場での組み付け方法が作業者によって異なったり、同じクルマを製造するのに工場間で作り方が違ったりというのは絶対にあり得ない。それが農業の現場では当たり前のように散見されていた」と喜多氏は振り返る。
しかし、トヨタも農業は門外漢。下手に口出しするのではなく、第三者の目から客観的に作業の様子を見て、「なぜここに物を置くのか」「こうした方が次の作業に移りやすい」「トラックの運搬車はここまで段取りすればロスが少ない」といった具合に改善の提案をするとともに、鍋八農産の現場作業者と何度も話し合いながら標準化を進めていったという。
このような取り組みを1年間行ったことで、次につながる成果を残すことができた。一方で、「こうした取り組みをトヨタが協力しなくてもできないものか」という新たな相談を受けることとなった。そこで2012年、農業法人の支援に向けて開発に着手したのが、農業IT管理システム「豊作計画」である。
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