アバクロが衰退した原因はどこにあるのか:人に話したくなるコラム(3/3 ページ)
米国アパレルブランドのアバクロンビー&フィッチが苦境に立たされている。2010年以降、米国内では既に200店舗以上を閉鎖していて、今年も60店舗を閉じる予定だ。かつて若者に絶大な人気を誇ったブランドは、なぜ衰退してしまったのか。
アバクロが方針転換をした理由
アバクロがここまでブランドの方針を変更したのには理由がある。アバクロがターゲットとしている10代の若者は、米国で年間300億ドル(約3兆2700億円)を市場に落とす魅力的な層だ。消費者の市場調査などを見ると、実のところ、若者は買い物が好きなのだ。ただし、その購入スタイルが従来とは異なってきており、ブランドも手探りしながら今の若者の趣向を研究している状況だ。
彼らに振り向いてもらうには、まだまだ課題がある。ファッションのサイクルが早まっているため、店頭にいち早く流行アイテムを並べられるように、アバクロは米国や南米での生産力を上げるようにしている。さらに、ネット上で時間を過ごすことが多い若者にリーチするため、ソーシャルメディアでの情報発信やEコマースにも対応が迫られている。アバクロの2013年度の売り上げは約41億ドル(約4460億円)だったが、Eコマースでの売り上げは全体の19%にあたる7.8億ドル(約850億円)ほどだ。これから数字を伸ばすことは生き残りを賭けた至上命令だろう。
カジュアルブランドでありながら、ある意味ブランドポリシーを貫き「とんがって」いたアバクロンビー&フィッチがトーンダウンしたのは残念だ。だが、傷が浅いうちに改革に踏み切ったのは正解だったのかもしれない。
アバクロに限らず、他ブランドも同じような問題を抱えている。ターゲットとなる若者は、米国に限らず日本でもかつてないほどマーケティングするのが難しい。しかし、米国ではすでに最も人口の多いグループとなっているこの若者との格闘は、まだ始まったばかりに過ぎない。
日本でも今の若者は「さとり世代」などと名付けられ、「恋愛しない」「ブランド服は着ない」「海外旅行をしない」などと言われ、上の世代からは何とも分かりにくい層になっている感がある。苦戦しているアバクロから学べることは、若者の実態を手探りでも確実に把握していくのはさけられないということだろう。
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