「アイスバケツチャレンジ」にある種の「いかがわしさ」を感じてしまう理由:窪田順生の時事日想(1/3 ページ)
先日放送された『24時間テレビ』の平均視聴率は、歴代6位の17.3%――。「アイスバケツチャレンジ」に挑戦した人の姿が、次々にネット上にアップ――。こうした“善意”に違和感を覚える人も少なくないのでは。その理由は……。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
今年も『24時間テレビ 愛は地球を救う』が感動のフィナーレを迎えた。
TOKIOのリーダー・城島茂さん(43)がヘロヘロになりながら足をひきずって歩いている姿は同世代としていたたまれないものがあったし、子どもの時にいつも見ていた「チャラ〜ン」の林家こぶ平さんが闘病されている様子などはグッとくるものがあった。
出演タレントが高額ギャラをもらっているだとか、寄付金の使途が不透明だとかという批判や、これでもかというお涙頂戴(ちょうだい)のあざとい演出に嫌悪感を示す人も多い『24時間テレビ』だが、個人的には「まあこういうのもアリだよなあ」という感じがする。
地道な活動をされている方たちからすれば、神聖なチャリティを売らんかなのお祭り騒ぎにしやがってという批判をしたくなるのも分かる。
だが、平時ならばあまり注目を集めない難病や被災地にスポットがあたって、実際に募金も寄せられる。いろいろと批判の多い「アイスバケツチャレンジ」(筋萎縮性側索硬化症(ALS)を研究するために、バケツに入った氷水を頭からかぶるか、ALS協会に寄付する運動のこと)も然りだが、タレントの売名行為だろうが企業PRだろうが、埋もれている問題に目を向けさせて、しかるべき団体にカネが集まったというのは動かし難い事実だ。実際に日本ALS協会に寄せられた募金は、昨年同時期の10倍になったんだとか。
その一方で、この手のチャリティを「いかがわしい」と思う人々がワーワーと声をあげ始めているというのも、喜ばしいことではないかとも思う。これまで日本では「善いことをやっている」というだけで、世の中からかなり大目に見られてきたからだ。
正しいことをやっているんだから細かいところは目をつぶれよ、みたいな考えがスタンダードで、それにちょっとでも異を唱えると、「キー、こんな人権侵害許せない! 朝日新聞に投書してやる!」みたいにヒステリックな声に袋叩きにされる、ということが繰り返されてきた。
要は、「善いこと」をしているだけでどんなデマカセも信じられてしまうのだ。典型的なケースがあるのでご紹介しよう。
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