JR北海道は今、何をすべきか――西武鉄道にヒントあり:杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)
JR北海道の一連の整備不良問題は、ついに会社全体の不祥事となってしまった。監督官庁である国土交通省は特別保安監査を無期限で実施するという異例の処置をとっている。正すべきは正し、その後のJR北海道はどうすべきか。
西武鉄道を輝かせた「スマイルプロジェクト」
上場廃止となった西武鉄道にとって、企業イメージの回復が急務だった。2005年に西武グループは再編されて持株会社制に以降する。その動きが落ち着いた2006年。西武鉄道は新たなグループビジョンを策定し、「でかける人を、ほほえむ人へ」というスローガンを掲げた。2007年には「スマイル & スマイル部」を作る。この部署が前述のアニメやペットを取り入れた活動へ発展していく。
2007年には日本動画協会と協力して「アニメのふるさとプロジェクト」を展開。沿線のアニメ製作会社の協力のもと、子ども向けの環境啓蒙パンフレット『アニッコ』を発行し続けている。この夏に公開されたアニメ映画『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』は秩父が舞台であり、西武鉄道はテレビ放送が始まった2011年に『アニッコ』に登場させていた。町おこしの手法として、大泉学園駅では銀河鉄道999、上井草駅前にはガンダムのモニュメントを設置している。
2008年には新コンセプトの新型電車30000系を投入。従来の黄色い西武電車のイメージを覆し、銀色の車体に白いマスク、新コーポレートカラーのブルーとグリーンの帯が入った。デザインは新生をイメージするタマゴの丸みを生かし、内装は座席の柄や吊手の形などに社内の女性の意見をたくさん取り入れた。
2009年に池袋線の武蔵横手駅線路脇の社有地でヤギを2頭配置して、草刈りを機械からヤギに転換。これも微笑ましい話題となった。現在は2頭の子ヤギも生まれ、4頭のヤギ一家が沿線の人々を和ませている。2010年には飼い犬と乗れる電車「いぬでん」を運行した。
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