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ブラック企業問題はなぜ「辞めればいいじゃん」で解決しないのか窪田順生の時事日想(4/4 ページ)

従業員を劣悪な環境で働かせ、使い捨てにする――。いわゆるブラック企業が社会問題になっているが、なぜそこで働く人は会社を辞めようとしないのか。その背景にあるのは……。

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SOSの声を奪ったのは「がんばろう」

 ただ、この一本松が人間だったら、かなりグロテスクだなとは思う。

 必死に闘って力尽きた者に、「みんなのため」と倒れることすらも許さない。防腐処理を施した亡骸を「がんばろう、がんばろう」とつっかえ棒をして強引に立たせる。

 この国は良くも悪くも、倒れた者を放っておいてくれない。

 終わりのみえない除染作業などに取り組んでいる方たちに取材をすると、「周りから“がんばろう”とか励まされると余計に辛い」という声を聞く。

 がんばろう、日本。がんばろう、がんばろう。

 こういう声が日本中に溢れている。善意の呼びかけも四六時中繰り返されれば、疲弊した人を追いつめる「強迫観念」になる。

 「もうがんばりたくない」と耳をふさいでも膝をついても、「みんなもがんばってるんだから、がんばろう」という声がどこからともなく聞こえてくる。

 「助けて」と綴って亡くなって人たちを、追いつめたのは確かにブラック企業や生活保護行政だろう。

 しかし、彼らからSOSの声を奪ったのは、「がんばろう」ではなかったか。

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