「黄砂じゃなくて煙霧でした」報道の正しい読み方:窪田順生の時事日想(1/4 ページ)
この週末、都内の空は「茶色のもや」がかかったような色をしていた。空を見て「黄砂ではないか」との指摘があったが、気象庁は「煙霧」であると発表。確かにあれは「煙霧」だったが、PM2.5を大量に含んだ“汚れた砂けむり”だったのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
この週末、都内では「煙霧」がすごかった。
ちょうど「そろそろ東京にも黄砂が飛んできますよ」なんてニュースもあったせいで、「本当は黄砂なのにマスゴミが隠蔽(いんぺい)している」なんて話も飛び出だして、慌てて気象庁が「黄砂ではない」なんて発表もした。
放射線物質の件があるので何をどう言ってもウソ臭くなってしまうということなのだろうが、日本の役所やマスコミは基本的に隠蔽などしない。むしろ、中国やら米国やら後ろめたい話がわんさかある国に比べれば、かなりオープンに事実を伝えているほうだ。
じゃあ、なんでいつも隠蔽疑惑をかけられるのかというと、この「事実」というやつの線引きが思いのほか曖昧で、断片的な情報しか公表しないため、物事の全体像が見えにくいからだ。
例えば、今回の「煙霧」について、ほとんどの報道機関はこんな調子で振り返った。
気象庁によると、関東地方で10日午後1時半ごろから、強風により砂ぼこりなどが巻き上げられる「煙霧」と呼ばれる珍しい現象が発生した。寒冷前線の通過に伴って発生した強風が、関東地方内陸部の畑などで砂ぼこりを巻き上げ、東京都心などに到達したものだとみられている。
気象庁が発表した「事実」に予断を加えず淡々と流す。この報道によって、多くの人たちがホッと胸をなで下ろしたことだろう。
「中国からの大気汚染で東京の空がヤバいことになっている」なんて大騒ぎしていた人たちがいたけれど、結局は単なる自然現象じゃないか。なんて思った人もいるかもしれないが、ちょっと視野を広げてみると、全く違う「事実」が見えてくる。
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