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コラム

犯人は「桜」を切ったのか? しなの鉄道伐採事件杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)

どんな趣味にも素行の悪い人はいる。特に最近は鉄道ファンの非常識な行動やマナーの悪さが問題になっている。先日も、桜の伐採という被害を受けた「しなの鉄道」が、逆に鉄道ファンに反感を買うという“珍事”が起きた。

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杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 桜の伐採という被害を受けた「しなの鉄道」がTwitterで心情を吐露したところ、鉄道ファンの反感を買い炎上。「被害者が逆に謝罪する」という珍事が起きた。なんとも気の毒でやるせない事件だったが、炎上は収束に向かったようだ。しかし、このままでは原因の考察や対策案が生み出されないかもしない。「鉄道ファンの愚行騒ぎ」という嵐が去っただけになってしまう。起きてしまったことは取り返せないが、私たちはこの経験を生かせないだろうか。


しなの鉄道「公認非公式アカウント」が桜伐採を報告。このあと、「桜を切ってまで撮った写真に価値があるのか」と嘆くツイートも

 事件の発端は、しなの鉄道の沿線に植えられた桜が伐採された事件だった。現場は御代田(みよた)と信濃追分(しなのおいわけ)駅の間。ここは線路の南側でカメラを構えると、浅間山を背景に列車が走る姿を撮れる。「富士山を背景に走る新幹線」に通じる定番の構図、といえば鉄道ファン以外の方にも人気撮影地と分かっていただけるだろう。

 しなの鉄道は10年前から、その線路の南側に桜を植樹していたという。そして今年、ついに蕾(つぼみ)をつけたが、その木が切られた。それを「しなの鉄道公認非公式アカウント」が報告。鉄道ファンが撮影のために切ったと思わせる内容だった。これについて、一部の鉄道ファンが反発。鉄道ファンと決めつけていのか、証拠があるのか、しなの鉄道は鉄道ファンを敵に回した……という騒ぎになった。これを受けて、このアカウントは謝罪するに至る。


チェーンソーのようなもので切られていた桜。計画的犯行を匂わせる。そして翌日、謝罪のツイート

 ちなみに「公認非公式アカウント」とは、当初は社員が始めた公式アカウントだった。しかし会社の広報対応としてTwitterに取り組むことになり、別途公式アカウントを取得したため、非公式アカウントとなった。ただし会社としては存在を認めているため、公認非公式アカウント、というわけだ。主に鉄道好きの社員とファンの交流として、平穏なやり取りが行われていた。公式見解ではないとしても、会社の発言と受け止められるアカウントである。

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