アマゾンに勝つための小売店舗ビジネスのあり方とは(2/2 ページ)
新年の祝いのムードもつかの間、米国の小売業界を脅かす過酷な現実。それはネットに押されて、売上が鈍っているということ。小売店舗がその状況を挽回するためにはどうすればいいのだろうか。
しかし、考えてみれば、「ショールーミング」と言っているうちは、「ショールーム」としてお客さんに活用してもらっているということなのです。つまり、少なくとも顧客が門口をまたぎ、店内に入ってきているわけですから、この機会をものにできるか否かは店舗の実力次第ということになります。
私は、ショールーミングに対抗する最も有力なカギは第三の「体験」にあるのではないかと思っています。店舗小売業者は、「顧客が来店する意義」や「店舗でなければ提供できない価値」に着目し、それをベースにして具体的な戦略を考えていくべきだと思うのです。
「顧客がまた来たいと思うような店舗体験を創造するには?」ということを今一度考えてみる。そうすると、行き着くところは、店舗で顧客に接する「人(社員)」が作り出す感動、温かみ、人間味、エンターテイメントというところになってくると思います。
「グローサリー(食料雑貨品)はネット通販との競争があまりないカテゴリーなので指標にならない」という批判を恐れずに言えば、トレーダー・ジョーという米国のスーパーには「店舗のあるべき姿」として常に注目しています。猫も杓子もFacebookやTwitterと言っている時代に、この会社はFacebookもTwitterも持たないというローテク・アプローチです。
全米に360を超える店舗を持ち、年商も85億ドル(推定)という大手チェーンでありながら、店舗に行けば店員と顧客の会話が飛び交う、まさに「ハイタッチ」なショッピング体験創造で熱烈なファンをつなぎとめている会社です。商品力に非常に優れた会社であることも否めませんが、顧客の「熱愛」の決め手はやはり接客だと思います。私も馴染みの店ですが、「これ買ったことある? おいしいのよ」と店員さんにものを薦められたり、逆に薦めたりという会話をいつも楽しんでいます。
電化製品量販店最大手のベスト・バイなどは、ショールーミングの打撃をまともに受け、先行きが心配されていますが、こういった店舗が起死回生を果たすためには、根本に立ち返って、「店舗だからできること」「店舗にしかできないこと」を見つめなおし、店舗体験を大刷新することが望まれていると思います。(石塚しのぶ)
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