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コラム

面白い恋人VS. 白い恋人から、コンプライアンスを考える(1/2 ページ)

石屋製菓が主力商品「白い恋人」の商標権を侵害したとして、「面白い恋人」を販売する吉本興業を訴えた問題。「そう、うるさいこと言わずに」「まあ、いいじゃないの」と笑って見ている人も多いだろう。しかしやはり、吉本のコンプライアンス意識には疑問符を付けざるを得ない。

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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 11月28日、石屋製菓は主力商品「白い恋人」の商標権を侵害したなどとして、土産菓子「面白い恋人」を企画・販売する吉本興業など3社を札幌地裁に提訴した(「石屋製菓社長「『面白い恋人』面白くない」 吉本提訴」)。

 吉本興業が「面白い恋人」の販売に当たって、「白い恋人」側と一切の協議をしていなかったと知って、かなりの違和感を覚えた。多くの人は、両者で話し合いがあって、ブランド使用料くらいは払っているものと思っていたのではないだろうか。でなければ、中国のひどい商標権侵害と何も変わらない。

 「白い恋人」側が、「商品名も『面』の字が入っているだけでほぼ同じ。パッケージも背景の色彩や、模様となっているリボンの形状、文字やイラストなどもそっくり」と提訴の理由を発表しているが、誰が見てもその通りだろうと思う。

 私自身、毎週『吉本新喜劇』を楽しんでいるし、タレントたちも大阪の人たちに本当に愛されている。芸能に対する大きな功績は否定しようもなく、関西での企業としての存在感は立派なものである。

 一方、吉本興業はこれまでも経営をめぐる創業者一族との争いや、タレントと暴力団との関係など、さまざまなスキャンダルが報じられてきた。吉本は事実無根としており、大メディアもそういう報道は行わないが、テレビ局と持ちつ持たれつの関係にある以上それは当然で、週刊誌の内容も大きく外していないだろうとも思える。いずれにしても、今回の件も含めて、その企業統治に疑問符を付けざるをえない。

 そもそも、吉本興業はタレントの派遣業あるいは番組制作請負業である。普通の人材派遣業や請負業よりもうかるのは、派遣(使用)する人材の単価が高く、人件費や労務管理・福利厚生にかかるコストがそれに対して安いからだ。

 ただし、普通の人材派遣業や請負業に比べるとパイが限られている。テレビやラジオがお笑い一色になることもないし、お笑いイベントが劇的に増えるはずもないので、これ以上は大きな成長は望みにくい。人材派遣・番組制作請負では、そろそろ限界が来ている。そこで、人材派遣業以外の収益源を早期に作り上げないといけない、という状況にあるのである。

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