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取材現場では何が起きているのか? 新聞記者と雑誌記者に違い(5)上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(2/3 ページ)

大きな事件が起きたとき、新聞記者はどのような取材をしているのだろうか。その一方、主要メディアと比べ記者の数が少ない雑誌はどのような取材活動を行っているのだろうか。新聞記者と雑誌記者、その取材方法の違いについて、ノンフィクションライターの窪田氏が語った。

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窪田 そうなんですよね。

上杉 この記者クラブの体質は、日本の一般企業と同じ。例えば上司が家に帰るまで、部下は会社に残って仕事をしなくてはいけない――。それと同じで、デスクやキャップが家に帰らないと、記者クラブを離れることができないんですよ。

窪田 報道の世界は日本的であってはいけないのに、すごく日本的な社会で仕事をしていますよね。

新聞記者にとって一番怖いのは特オチ


ジャーナリストの上杉隆氏。

土肥 窪田さんの場合、雑誌で記者や編集の仕事をしていて、その後、朝日新聞に就職されました。記者クラブがない世界から記者クラブがある世界に移ってみて、どのように感じましたか?

窪田 さきほども申し上げましたが、記者クラブは日本の一般企業と同じ体質で、県庁の人が帰るまで記者は帰れません。もちろん朝日新聞だけではなく、ほかの新聞社の記者も残っていますね。

上杉 要するに抜かれちゃいけないというマインドが強い。新聞記者にとって一番怖いのは特オチ※。スクープをとるよりも、減点主義なので特オチをすると評価が下がってしまう。

※特オチ:他社が一斉に報じているのに、1社だけ後れを取ったケース。

窪田 特オチをしたあとに、もしスクープをとったとしても“チャラ”にはできない。特オチをした時点で、「記者としての資質がなっていない」という評価をくだされてしまう。だから役所の職員が帰るまで、記者クラブに詰めていないといけません。夕方の5時までは記者クラブに詰めていて、その後「よーいドン!」といった感じで、それぞれの記者が独自取材を始めます。

上杉 記者クラブにいる人たちって、いろいろなことを自分たちで規制しているんですよね。例えば「そこに行ったらダメですよ」とか。

窪田 取材対象の幹部の人に言われているんでしょう。「あそこの家に行って、取材はしないように」とか。「ルールを守ってください」などと言われるんですが、ルールって言われてもなあ……みたいな。

上杉 なんのルールだよっ! お前たちのルールだろっ(笑)。

 僕が記者会見に入っていると、「記者クラブのルールを守れ」と言われてしまう。しかし記者クラブから排除されている人間なのに、なぜ自分たちのルールを押し付けるのかが理解できない。じゃあ、いつも会見に入れろというと、「それはできない」という。入れないということは自分たちの世界とは関係のない人間なのに、会見の席にいると「ルールを守れ」と言ってくる。本当に狂っている。

窪田 僕の場合、雑誌で記者クラブの外側にいた。しかし朝日新聞で働くことによって、記者クラブの内側に入れることができました。内側に入ってみて、一番驚いたことは規則が多いこと。記者クラブの中にはボードがあって「この記事は○時に解禁」とか書いてあるんです。しかし不思議なことに、記者はそれにきちんと従っているんですよね。ある人からは「それは絶対に破っちゃダメだからね」と言われてしまった。

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