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1億本突破! 「い・ろ・は・す」はナゼ売れるのか?それゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

日本コカ・コーラのミネラルウオーター「い・ろ・は・す」が絶好調だ。ミネラルウオーターでは最速の97日で1億本を達成したという。確かに特徴のある商品だが、ナゼ、それほどまでに売れるのか?

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それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年9月11日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 9月2日。新聞のカラー全面で「あなたと『い・ろ・は・す』が世界を変えはじめました」と題する広告が掲載された。それは同製品の販売1億本突破のお礼であり、「環境にいい」というポジショニングを裏付ける、CO2の削減効果の算出の報告でもあった。

 同社のニュースリリースによると、導入後の6月から2カ月連続して、コンビニエンスストアにおける小型天然水(500ml)シェアNo.1を獲得し、当初の販売数量目標を上回るペースで推移しているという。

 ナゼ、これほどまでに売れるのか。

 初めに外部環境の影響を考えてみよう。CO2の削減に対する世界的な取り組みが進行している。継続性のある環境負荷の低い生活をしようというLOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability、「い・ろ・は・す」の由来にもなっている)に注目が集まり、一過性のブームではなく、その実践も日々の生活に着々と溶け込みつつある。

 ミネラルウオーターの市場を考えてみよう。取水地を国内とする製品以外にも、海外勢が多数存在する。取水地から日本まで輸送するための環境負荷「ウオーターマイレージ」を考えれば、国内勢は圧倒的に環境アピール効果が高い。

 国内勢の競合に対しても、「い・ろ・は・す」は独自の技術でわずか12グラムという省資源ペットボトルを実現している。同社によれば、従来品より40%軽く、国内最軽量だという。つまり、エコやLOHASを訴求するために、自社の技術を生かして絶対的に有利なポジションを獲得していることが分かる。

 しかし、環境に適応したいい商品(Product)であるというだけで売れるほど世の中は甘くはない。コカ・コーラシステムの圧倒的な販売力がバックボーンとなっていることは間違いない。コカ・コーラの力の源泉は、全国に約100万台を展開する自動販売機だ。

 街に出れば、そこかしこにあるコカ・コーラの自販機に、数フェイス並んでいる「い・ろ・は・す」が目につくだろう。マーケティングミックスの4つのP(Product・Price・Place・Promotion)の一つである、Place(販路)の強さが売れている理由の1つだろう。

 価格的には特に安売りをしているわけではない。しかし、上記のリリースに購入者の声が載っている。「520mlという容量にお得感がある」。つまり、競合より増量して割安感で勝負しているのである。Price(価格)も売れる原動力になっている。

 Promotionも広告がよくできている。「飲み終わったらクシャッとつぶせる」という製品特性を表わすため、見事なまでにひねり絞られたボトルの上から、緑の葉っぱが顔を出している表現。エコ気分満点である。「子どもが喜んでボトルをつぶし、資源回収に出してくれる」との声があることもうなずける。

 ここまで成功要因を挙げてきたが、それだけが大ヒットの理由だろうか。商品が売れるためには、マーケティングミックスの4つのPの整合性が欠かせない。しかし、それ以前に魅力あるターゲットを取り込めていることと、そのターゲットから評価されるポジショニングが獲得できていることが重要なのである。

 もう一度、振り返って考えてみよう。

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