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「光熱費削減はお任せあれ」――人工知能で施設を省エネ化(1/3 ページ)

光熱費の高騰で頭を悩ます企業が施設を省エネ化するための手助けをするベンチャー企業、ウッドノート。自社製の人工知能を用いた細かなデータ分析や徹底した現場調査から、施設の無駄を見抜き、改善策を提示していくのだ。

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 それは、“彼”がある商業施設で水の使用量の計測を始めたときのことだった。

 「普段ほとんど使っていないトイレなのに、24時間人が並びっぱなしになるくらいの水が使われている――」

 客がそれほど入っていないにも関わらず、トイレの水使用量が異常に大きな値を示したのだ。普通、水や電気などの光熱費は、施設全体の使用量は把握していても、どこでどれくらい、どのような状況で使われているかまではチェックしないもの。この施設も計測するまでトイレの“異常”には気付いていなかった。

 この数値はおかしい、トイレの水道管が破裂しているのではないかと急いで敷地内を調査したが、その様子はない。しかし、さらに調べた結果、ついに真相を突き止めた。原因はトイレの近くにある池だった。

 この池には水が一定量になるように、トイレと同じ水道管を使って水が補給される仕組みになっていた。調査したところ、池から水が外に漏れていたことが分かったのだ。池の水量を保つために水道管から水が注がれ続けたため、異常値が出たというわけだ。対策後、水道代が劇的に下がったのはいうまでもない。

 異常の原因を突き止めた“彼”の名前は、水谷義和。ビルや施設の設備チェック、環境対策を行っているベンチャー企業、株式会社ウッドノートの若き代表取締役だ。

大手ゼネコンを飛び出して、ベンチャー企業を設立


ウッドノートの水谷義和代表取締役

 「建物の中に入れば、建物がどんな健康状態なのかが大体分かります。だから初めに『僕らは何%光熱費を下げる』とお客様にはっきり伝える」と水谷氏は言う。

 建物の省エネ化は、今もっとも注目されているエコ対策の1つ。大企業はCO2対策に、不動産ファンドは経費率を下げるため光熱費対策にと躍起になっている。古くなった建物を、環境に配慮した構造へと変えていくことが急務となっているのだ。

 水谷氏はもともと竹中工務店に勤務し、東京ドームシティ「ラクーア」など環境配慮型施設の企画・設計を手がけてきた。

 独立しようと考えたのは、ある建設中のビルの上から街を見下ろしたときのことだった。水谷氏は思った。

「新しい省エネ施設を建てることも大事だが、ここから見える古いビルを何とかしなくては」

 環境に配慮して作られた建物は、スーパーゼネコンが手がけるような有名ビルなどに基本的に限られており、建築物全体の数%程度。「コストありき」で作られる建物のほうが圧倒的に多いのが現実だ。ウッドノートはそんな「コストありき」で作られてしまった建物を、環境配慮型に変えるという作業をしている。

「CO2削減請負人」として

 ウッドノートのキャッチフレーズは「CO2削減請負人」。最新機器を活用して、空調などビル設備のエネルギー消費量を管理。CO2削減と省エネ・省コスト化を図ると同時に、建物の価値向上の施策も企業に提案しているのだ。言うなれば「建物の医者」というところか。

 “患者”を訪れた時に、水谷氏がまず行うのは“メタボ検診”だ。建物の水道、電気、ガスなどの運用データを1分間隔で自動計測し、データを蓄積・分析する。それによって、まずは健康状態をチェックするわけだ。

 次は食事療法。建物の診断や計測データ分析に基づき、遠隔制御を用いて無駄なエネルギー消費のない最適な運用をする。それは単純にどれだけエネルギーを使っているかを管理するだけではない。ポイントはエネルギーの“使われ方”を管理することにあるからだ。

 例えばコンビニエンスストアの場合、客がたくさん入る時間帯とそうでない時間帯とでは冷蔵庫などの稼働状況は変わる。客が多い時にエアコンや冷蔵庫、照明がフル稼働しているのは仕方ないが、ほかの時間もフル稼働させておく必要はない。そのため、ウッドノートは店舗のPOSデータも分析の対象に含めているのだ。

 また、飲食店ではどうなるか。水道料金が高ければ、トイレをチェックする。どれぐらいの人数が使用するのか、1回使用すると何リットルの水を使うのかなどを細かく確かめる。その後は厨房をチェック。洗い物をする時に水を止めているかを見る。これも数字として大きく表れてくるという。それでも使い過ぎているなら、水漏れの可能性も考える。データ以外に目や耳で集めた情報も含めて、総合的に判断しなくてはならない。「活動状況が分からないと、本当の意味でのエネルギー効率改善につながらない」と水谷氏は力説する。

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