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インタビュー

お通し無料、接客マニュアルなしの理由――串焼きチェーン「くふ楽」福原裕一氏(中編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(3/3 ページ)

「居酒屋甲子園」をご存じだろうか。覆面調査員が全国の居酒屋を回り、味やサービスなどを調査するというコンテストだ。これで全国6位に入ったのが「くふ楽 本八幡店」。マニュアルに頼らないレベルの高い接客を、チェーン店で実現できる、同社ならではのシステムとは?

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社会価値の創造(2)――社会起業家として、現代の若者の就業問題解決を目指す

 社会価値の創造の中で、福原氏が最も情熱を注いでいるのは、(5)の社会が抱える困難な課題への取り組みであり、その中でも、若者をめぐる問題である。

 少子高齢化時代の本格到来で、若年労働力の減少は、日本経済のボトルネックになりかねない。しかし肝心の若い世代を巡る労働環境は、厳しさを増すばかりだ。ニートやフリーター、派遣社員として厳しい生活を強いられる若者の増加や、入社3年以内に3割が退職する風潮、うつ病の蔓延といった問題・課題が広がり、いわば“羅針盤なき航海”を余儀なくされているのが、今の日本である。

 福原氏は、KUURAKUグループをこのような若者の問題の解決の場として社会に提供することを目指している。前編の最後で紹介したように(参照記事)、事業目的に「人財の育成」を掲げているのはこのためだ。「仕事を通じて人間的成長、目標達成する喜びを感じ、『夢を実現する』志を持つ人々を育成したいと考えます。夢がありながら、チャンスがない若い人達に『くふ楽』でのチャンスの場を提供し多くの事業家を育成したいと考えます」(福原氏)

 実際に、KUURAKUグループ各社のシステム/プロセスは、若い人材を成長させることに成功している。多くの若きスタッフたちが、仕事を通して目標を達成する喜びを得ているのだ(詳細は後編で触れる)。

 またそれを補完するように、同社では「ハッピー&サンクス」「バイトドリーマーズ」といったNPO法人を設立し、様々な活動を展開している。

NPO法人「ハッピー&サンクス」(左)と「バイトドリーマーズ」(右)

 ハッピー&サンクスでは、NGO「セーブ・ザ・チルドレン」の子供支援プログラムを通じて、ネパールに新しい学校を建設する事業を応援しており、社員やアルバイトがボランティアで、募金活動やフリーマーケットに参加している。このほか、「妊婦体験」(8キロの妊婦ジャケットを身につけて街を歩く)などの活動を行っている。

 バイトドリーマーズでは、「伝説のアルバイトを探せ!」などの活動を通じて、全国のアルバイトを応援し、彼らを夢の実現へと導こうとしている。「こうした活動に自主的に参加することで、若い人達は、自分自身が社会とどう関わって生きていくのか見えてきますし、それを通じて、会社に誇りが持てるようになれば何よりです」と福原氏は話す。

 さらに、これらNPO法人とは別に、KUURAKUグループとして、日本女子アイスホッケーリーグ「ディビジョンワン」のスポンサーシップを行っている。これは福原氏自身が子供時代、プロ野球選手を目指していたこともあり、高い目標に向かって一丸となって頑張る若い人々を応援したいという気持ちも人並みはずれて強いためだろう。こうしたスポンサーシップ活動も、社内の若いスタッフの人間的成長に良い刺激となっているという。


ハッピー&サンクスの妊婦体験のようす

 さて、こうした若い世代の成長や夢の実現を願う福原氏の想いは、KUURAKUグループのシステム/プロセスの中で、どのように具現化し、いかに組織能力を高め、戦略実現に結びついているのだろうか? その概要については後編で検討したい。

嶋田淑之(しまだ ひでゆき)

1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」「43の図表でわかる戦略経営」「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。


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