最終回・MBAの理想と現実――卒業して分かったこと:ロサンゼルスMBA留学日記(3/3 ページ)
先日、MBAを無事に卒業、東京に戻って新しい職場に就職した。英語ペラペラになったのか? 就職先は選び放題だったのか? 最終回は2年間の留学生活を振り返り、MBAのメリットとデメリットを改めて本音ベースで考える。
現実その3:理論の限界
MBAではビジネスに関連した多くの理論を学ぶ。それは本連載の最初のほうで紹介したとおりだ。戦略やマーケティングの「それらしい」理論を知り、専門用語を使いこなせば、いっぱしの経営者のような顔をすることもできる。
だが、当然のこととして理論と実践は異なる。それはMBAの学生たちも、嫌というほど分かっている。勉強しながら、「こんなBuzz Words(格好つけた専門用語)を暗記して、何の役に立つのかな?」という会話も交わしている。
とはいえ個人的には、勉強内容についてはポジティブにとらえている。連載第1回でも触れたとおり、戦略、会計、ファイナンス、オペレーションマネジメント、マーケティング、すべてを網羅して学ぶことができ、視野が広くなる。経営のすべてが理解できるとは言わないが、経営のすべてを理解するための「考えるツール」をもらった、というイメージだ。
いずれにせよ、頭でっかちの理論だけではなく、ビジネスの本質をより深く“経験”していくのは、卒業後の課題となる。
とりあえず度胸は付く?
いろいろネガティブなことも書いてきたが、米国のビジネススクールに通って、これはレベルアップしたなと思える点を1つ挙げて終わりにしよう。それはズバリ、「とりあえず度胸は付いた」ということだ。
日々慣れないことの繰り返しで、チームメイトとのコミュニケーションに苦しみ、ときには英語でプレゼンもさせられる。生活面では大家ともめにもめて「お前を訴えてやる」とすごまれたり、前回ご紹介したとおり、メキシコ人の騒音に悩まされたりと、海外留学生活にトラブルの種はつきない。
このほかにも住んでいるアパートが停電になり、外に出たところ実はその区画全体が停電で、信号機すらついていなかったとか、車の修理で危うく数百ドルほどボッタくられそうになったりとか、米国社会はいろいろな経験をさせてくれる。学校のプロジェクトでキューバに出かけ、社会主義の実態にショックを受けたこともあった。
MBAを取得したからといって、実は大したことがないというのは、MBA卒業生なら誰しもが分かっていることだ。しかし、そうはいっても貴重な体験をさせてくれるのもまた事実。MBAの理想と現実――この連載を通じて、いくらかでも伝わったなら幸いだ。(編集部より:本連載は今回で終了します。ご愛読ありがとうございました)
関連記事
- 僕が留学した理由――MBAには本当に価値があるのか
経営が分かるようになる、という触れ込みのMBA(経営修士号)。しかし実際に何を学び、その知識をどうビジネスに活かせるのでしょう。ロサンゼルス在学中の現役MBA留学生が紹介します。 - 「今すぐ海外に行きたい」――平均月収15ドル以下。社会主義国キューバの厳しい現実
社会主義共和国キューバで暮らす人々の生活はどうなっているのか。平均月収15ドルで働く彼らの仕事や生活、夢などに迫りました。留学日記番外編として紹介します。 - 大家は言った「お前を訴えてやる」――米国の不条理にがくぜんとする
大家から「訴えてやる」とすごまれる。突然、クレジットカードが使えなくなる――日本では考えられないようなミスやトラブルが多発する米国社会。しかしその一方で、米国人の一部が世界経済を席巻しているのも事実だ。なぜ「ミスが少ない」日本が、米国に勝てないのだろうか? - MBA後の転職の難しさ――ダーマ神殿に行ったら“レベル1”になった
筆者は今夏、外資系の企業でインターンを行った。しかし、そこで経験したことは、23〜4の若者に“負けた”屈辱。畑違いの職場に転職をすることの難しさを痛感した。 - トイレの紙の消費量は?――面接官の質問に“四苦八苦”
MBAの学生にとって人気の就職先の1つが「戦略コンサルティング」。戦略コンサルティングではちょっと変わった面接を実施するところが多い、例えば「1日のトイレットペーパーの消費量は?」と聞かれたら、学生は数字を使って論理的に回答しなければならないのだ。 - ロサンゼルスMBA留学日記・バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.