田中康夫県知事が踏み込んだ、その時――白骨温泉・若女将が語る「事件の真相」(中編):嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(1/4 ページ)
「白骨温泉の白濁する湯は、実は入浴剤を入れていたものだった」……『週刊ポスト』のスクープに始まった事件は、TBSで長野県知事の抜き打ち調査が放送されたことにより、日本中が注目する大問題となっていく。旅館はその時、どう対応したのか?
嶋田淑之の「この人に逢いたい!」とは?:
「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で目標に向かって邁進する人がいる。会社の中にいるから、1人ではできないことが可能になることもあるが、しかし組織の中だからこそ難しい面もある。
本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現するビジネスパーソンをインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。また個人の働きが、組織のなかでどう生かされたのかについて、徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。
→“入浴剤投入”発覚から4年――白骨温泉・若女将が語る「事件の真相」(前編)
→田中康夫県知事が踏み込んだ、その時(中編・本記事)
→“本物”の温泉とは?――ポスト秘湯ブームの今、満足できる温泉に出会う法(番外編)
白骨温泉に始まる温泉偽装発覚の全国的波及から4年。多くの温泉地がブームに乗って復権し人気を集めているというのに、白骨温泉はマスメディアから姿を消したも同然の状態が続いている。いくら事件発覚の発端になったとは言っても、白骨温泉だけが今なお責任を負わされたような形になっているのは釈然としない。白骨温泉自体も、事件後、情報発信をほとんどしていない。一体どうしたことか?
そうした疑問を解消するために、かつて筆者もたびたび投宿した白船グランドホテルの若女将、齋藤ゆづるさんに直接お話を伺うことにした。ゆづるさんは、田中康夫長野県知事(当時)の立入調査劇や、その後の「若女将・涙の記者会見」によって、“白骨温泉の偽装発覚の象徴的存在”のようになった人物である。
前編では、ゆづるさんが若女将になるまでの経緯や、入浴剤投入に至った事情などを聞いた。中編となる今回は、その後の「事件」発覚と拡大に対して、若女将として何を考え、どう対応したのかを振り返ってもらう。
→“入浴剤投入”発覚から4年――白骨温泉・若女将が語る「事件の真相」(前編)
→田中康夫県知事が踏み込んだ、その時――白骨温泉・若女将が語る「事件の真相」(中編・本記事)
→白骨温泉・若女将が語る「事件の真相」(後編)
前編で触れたように、1999年、白船グランドホテルでは、宿泊客急増への対応として風呂場の改装(拡張)を実施して以降、トレードマークだった「乳白色の湯」が失われ、入浴客からの抗議や問い合わせが多数寄せられるようになった。そこで、対応策として、透明度の高い時に限り入浴剤(六一〇ハップ)を投入したところ、入浴客とのトラブルは回避できるようになっていた。
その間にも「白骨バブル」はヒートアップ。白船グランドホテルでは、増え続ける客をもてなすため、若女将のゆづるさん以下全スタッフによる奮闘の日々が続いていた。もはや、入浴剤投入の是非とかそのリスクについて、改めて慎重に吟味する余裕はなかったのだろう。
白骨グランドホテルは、「プロが選ぶ観光・食事・土産物施設100選」の食事部門に選ばれている。夕食時には、信州名物のそばや馬刺し(上)、りんごを食べて育つ信州牛のステーキ(下)など、地のものを使ったとてもおいしい料理が並ぶ
しかし、思いもかけない形で「危機」は迫っていた。
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