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インタビュー

赤坂サカスは花を咲かすか? ――街おこしのキーマンは「神社経営の変革者」(前編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(1/3 ページ)

東京・赤坂の街に注目が集まっている。3月20日に複合商業施設「赤坂サカス」がオープン、28日にはこれを祝し、100年ぶりに復活した赤坂氷川神社の山車が巡行した。氏神様を核として、赤坂の街おこしに尽力する――若き神主、恵川義浩氏の構想とは?

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嶋田淑之の「この人に逢いたい!」とは?:

「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で目標に向かって邁進する人がいる。会社の中にいるから、1人ではできないことが可能になることもあるが、しかし組織の中だからこそ難しい面もある。

本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現するビジネスパーソンをインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。また個人の働きが、組織のなかでどう生かされたのかについて、徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。


 2008年3月20日、粋な大人の街、東京・赤坂に桜の花が咲き始めた頃、新しい複合型商業施設「赤坂サカス(AKASAKA SACAS)」がオープンした。

 「SACAS(サカス)」には、「新しい文化を咲かす」「桜を咲かす」「笑顔を咲かす」「夢を咲かす」などの想いが込められていると言われ、TBS放送センター、赤坂BLITZ(ライブハウス)、赤坂ACTシアター(劇場)、赤坂Bizタワー(オフィス&商業棟)、赤坂ザ・レジデンス(賃貸住宅)などから構成されている。

 ACTシアターでは、宮本亜門さん演出による岸谷五朗さんや中村獅堂さんら出演の「トゥーランドット」が話題を呼んでいるほか、Bizタワーに入った飲食店は、顔ぶれの新鮮さもあってか、多くのお客で賑わいを見せている。

 ちょうど時期的に「赤坂春まつり」と重なることもあり、さまざまなオープニング・イベントが企画されている。TBSは、人気番組「王様のブランチ」を始め、多くの番組の中で紹介しているようだ。

 果たして「赤坂サカス」は、この先、その名の通りに、大輪の花を咲かすことは出来るのだろうか?


意外と不振が目立つ、都内複合型商業施設の「なぜ?」

 2002年丸ビル、汐留シオサイト、2003年六本木ヒルズ、2004年COREDO日本橋、2006年表参道ヒルズ、2007年東京ミッドタウン、新丸ビル、有楽町イトシア……今世紀に入って、東京都内には新しい複合型商業施設(またはエリア)が続々と誕生している。

 いずれも都内の再開発事業、すなわち「街おこし」であり、テレビ局や大手広告代理店など有名企業が入居し、ブランド・ショップや有名飲食店が建ち並ぶ。さらに美術館や劇場などの芸術系施設、あるいは外資系高級ホテルやマンションなどの宿泊・居住施設が併設されている点に特徴がある。

魅力的な施設ほど、飽きられるのも早い

 初めの頃は、その華やかさに思わず目を奪われたものだが、似たような印象の複合型商業施設があまりにも次から次へとオープンするため、いささか食傷気味になっている人も多いのではないだろうか? 実際、そうした施設の中には、曜日や時間帯によっては早くも閑古鳥が鳴いているところも多い。あるいは、「ホリエモン事件」以降の六本木ヒルズのように、独特の“色”が付いてしまい、ブランド力の低下が進んでいるところもある。

 日本の都市再開発の顕著な特徴として、先進的かつ豪華な施設群を作るところまでは良いのだが、開業以降、自ら引き起こした巨大な環境変化に対応できず自滅してしまう傾向が挙げられる。

 作られた施設が魅力的であればあるほど、その施設のその後の事業展開に対して、顧客はより一層高い期待を寄せることになる。戦略経営の文脈で言うと、「環境乱気流」のレベルを自ら高めることになるのだ。

 いったん、そういう状況に自らを追い込んでしまったが最後、「絶えざる自己革新」を余儀なくされる。要するに、テナントをちょこちょこ入れ替えるなどのマイナーチェンジや、おざなりのイベント開催でお茶を濁すなどの現状延長+部分改良型の対応では、顧客を失望させ、自らを苦境に追い込むことになる。そこに必要なものは、非連続+現状否定型の、いうなれば「革新型経営」である。

 それに加えて、都内各所に魅力ある複合型商業施設が新たに出来ることによって、「環境乱気流」レベルはさらに一段と上昇してしまった。

 こうして、各再開発施設が生き残るためには、そこならではの「独自」な、他とは「異質」な、そして、それまでなかった「新規」な「Seeds」(事業の「種」)を、顧客の「Wants」(潜在的欲求)に訴求し続けることが必須の要件になってしまったのである。

 今世紀に生まれ、早くも衰退がウワサされている再開発による複合型商業施設というのは、結局、こうした「革新型経営」ができなかったところと言える。

 なぜ、革新型経営ができないのか? それに対する明確な回答を持って「赤坂の街おこし」に取り組んでいる人物こそが、今回の主役・恵川義浩氏、36歳だ。辣腕ビジネスマンとして活躍後、歴史と伝統を誇る赤坂氷川神社の禰宜(ねぎ)に就任。業界初と言われる取り組みを数々成功させ、「神社の経営革新」を次々に実現してきた異色のイノベーター(変革者)である。

 恵川氏の語り口は、物静かで淡々としている。しかしその眼差しには、烈々たる闘志が秘められている。

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