日本人のここがズレている! このままでは「観光立国」になれません水曜インタビュー劇場(観光公演)(2/8 ページ)

» 2015年07月15日 10時10分 公開
[土肥義則ITmedia]

日本の「おもてなし」戦略はズレている

日本食に満足する外国人は多いが……

土肥: 2014年の訪日外国人旅行者数が1300万人を突破しました。めでたし、めでたし。政府が掲げる目標「2020年に2000万人突破」も間違いなし。と思われている日本人も多いと思うのですが、数字をよーく見ると、なんだかなあと感じる点があるんですよね。

 例えば、シンガポールは東京23区とほど同じ面積なのに年間2000万人の外国人観光客が訪れているんですよ。人口は500万人ほどなので、街中を歩けば観光客だらけといった感じ。

アトキンソン: 外国人観光客数が1300万人突破したといっても浮かれてはいけません。例えば、ベトナムからの訪日客は対前年比で47.1%も伸びているんですよ。そんな数字を聞くと、「やっぱり日本はスゴいなあ」と思われるかもしれませんが、ベトナム人の13%は観光ではなく商談と研修で来日をしています。ただ、まだまだ伸びしろがあります。私の計算では「本当の観光客」は3分の1ほど。残りは「商用客」と「その他客」。アベノミクスなどの影響で「円安」が続いていることや、「免税」対応の店が増えたことなどがあって、日本に仕事で来ている人が増えてきました。

 ベトナムと同じような国はたくさんあります。見た目は観光であっても、実態は観光ではなく、仕事があるので日本にやって来た人も増えていることを見逃してはいけません。

土肥: 政府は、海外からの訪日客を2000万人に増やすために「おもてなし」戦略を打ち出しました。この「おもてなし」戦略はうまくいくと思われますか?

アトキンソン: 観光立国を語る際に、必ずといっていいほど「おもてなし」という言葉が出てきますよね。接客とかマナーとかお辞儀などを体験するために、日本にやって来る人もいるかもしれませんが、見たいもの、楽しみたいもの、泊まりたいホテルなどがなければいけません。「おもてなし」だけでは観光客はそんなに来ないと思います。

 日本にやって来るには、大変な出費になります。また時間もかかるので、会社を休まなければいけません。ここで想像してください。無償のおもてなしを提供してくれる国に、数十万のお金を払って、会社を休んで行きますか?

土肥: 日本に比べて、海外には危険なところが多い。それでもそうした国や地域にわざわざ足を運んでいるということは、おもてなしは必ずしもウリにならないかも。

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