西武鉄道の銀河鉄道999プロジェクトに「原作愛」はあるか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)

» 2015年07月10日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 西武鉄道で走っていた「銀河鉄道999のラッピング電車」を復活させようという新たな取り組みが始まった。

 西武鉄道は2009年5月から2014年12月まで、「銀河鉄道999」のイラストをラッピングした電車を走らせていた。ベースとなった車両は3000系といって、1985年度に製造された電車だ。1車両の長さが20メートルで、大手私鉄やJRの在来線通勤電車と同じ大きさ。ただし乗降扉が片側3カ所しかない。

 このサイズの通勤電車は乗降扉が片側4カ所あるものが主流である。扉の数が多いほど乗降時間が短くなり、所要時間の短縮化につながる。逆に扉の数が少ないと壁の面積が大きいわけで、すなわち座席を増やせる。扉は複雑な機構だから、少ないほど製造費も安い。

 JR東日本の話になるけれど、国鉄時代の東海道本線や横須賀線の電車は、まず客車列車に準じた片側2扉の電車が導入され、これでは不便だと3扉になり、現在は片側4扉の車両である。東京の通勤エリアの拡大に伴って、通勤電車の活動範囲が広がったわけだ。

 西武鉄道も事情は同じ。沿線の通勤客の増加に対応して片側4扉の車両を増備した。片側3扉の3000系は通勤ラッシュに対応しきれない。西武鉄道も他社と同様にホームドアの導入を検討しており、片側4扉の車両に統一しようと考えていた。つまり、製造から30年になる3000系「銀河鉄道999」は、もともと早期退役の運命だった。ラッピング車両は期限が来たら元に戻さなくてはいけないけれど、廃車予定の車両ならその手間も不要である。

2014年12月に引退した3000系「銀河鉄道999」 2014年12月に引退した3000系「銀河鉄道999」
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