なぜ小さな会社が、“かつてないトースター”をつくることができたのか水曜インタビュー劇場(トースター公演)(2/6 ページ)

» 2015年07月08日 08時15分 公開
[土肥義則ITmedia]

寺尾: 商品開発の目的は「パンをこがさない」ということではなくて、「最高のトーストを提供する」こと。最高のトーストを提供するのに、こげていたらおかしいですよね。ただ、それだけのことです。

 なぜ大手にそれができなかったのか。当事者ではないので分かりませんが、彼らは「真剣ではなかった」のではないでしょうか。

土肥: おお。

寺尾: 前回もお話ししましたが、いまの時代はモノを買うことではなく、“体験を買う”ことだと思っています。消費者はそこに興味があるので「ものすごいトースターを完成しました」では、なかなか通用しません。私たちは商品の開発にあたって「体験を提供する」ことに重きを置いてきましたが、大手メーカーさんは「商品」のことを考えてきたのではないでしょうか。

土肥: 商品開発をするのに、「商品」を考えるのは当たり前ですよね。どういう意味でしょうか。

寺尾: 毎朝おいしいトーストを食べることができれば、どういうことが起きるのか。大手メーカーさんは深く想像されていないのかもしれません。トースターでいえば安い商品が多いですが、消費者は本当にそうしたモノを望んでいるのでしょうか。店頭に安い商品ばかり並んでいるのは、ひょっとしたらマーケティング調査を重視しているからかもしれません。ちなみに、当社はマーケティング調査を行っていません。

土肥: 家電をつくっている会社がマーケティング調査をしないって……本当ですか?

寺尾: 絶対にしません。絶対に。

土肥: ……(疑っている)。

寺尾: 基本的なことは調べますよ。今回の場合で言えば、トースターの市場規模、動向などは。近くにいる人たちと「この商品、欲しいよね」「当たるんじゃないの?」「ダメなんじゃない?」といった会話をしますが、それだけ。自分たちが欲しいかどうかを重視していて、基本的にはマーケティング調査を行いませんし、コンサルティング会社の人たちに相談もしません。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.